春疾風

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2月も下旬になりもうすぐ3月。 会社は年度末で少しずつ忙しくなり、4月の異動のこともあって皆んななんとなくソワソワと落ち着かないように感じていた。 柊也とスノーボードをやりに行こうと話していたけど、なかなかお互いのタイミングが合わず行けずじまい。 今シーズンは無理かな⋯って思っていた。 「爽、もうすぐ異動の時期だな⋯。」 「うん。そうだね。」 サラリーマンには転勤は付きものだとわかってはいても柊也と離れることは想像がつかない。 ギューッと柊也に抱き着くと 「俺か青山のどっちかは県外に異動になると思う。」 更にギュッと手に力が入ると柊也はフッと息を小さく吐いて、私の頭を優しく撫ででくれた。 うちの会社は3月末の1週間前に異動の発表がされる。そしてその2週間前に本人に内示がありそれは社内では絶対に口外してはいけない。 来週はいよいよ転勤の内示がある週だ。 内示があり受けるか受けないかは⋯ 余程の事情がない限り断ることが出来ないのはわかっているし、もし東京への転勤となれば将来を期待されているということ。 仕事のことだけを考えれば青山君が転勤になったら柊也は落胆すると思う。 ただ、私とは遠距離恋愛になるということ。 私と(るな)もなんとなく会話が盛り上がらないし、複雑な気持ちで心がザワついている。 「あ〜!もう、早くハッキリしちゃって欲しい!でも、内示が出ても言っちゃダメだし、どうなんだろ。教えてくれるかな⋯ 」 「う〜ん、言えないんじゃないかな。見てればわかる?わかんないか⋯ 」 最初は柊也を見ていればわかると思っていた。 もし転勤の内示があったら私と離れるから悩むかなと。その様子でわかると思っていたけど⋯ 内示がないということは青山君が転勤になるってことで、それはそれで先を越されたと悩むかも⋯ そうなると私もわからなくなってしまう。 月が言うように早くハッキリした方がいいのかも知れないけど、それも怖い。 私達はそれぞれ色んな思いを抱えていたーー。
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