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｢柊也、今日アパートで待っててもいい？｣
｢あ〜、ごめんっ。今日は取引先の人と飲み会なんだ、先輩も一緒に。｣
｢そっか⋯ わかった。｣
｢明日、連絡するから。｣
恐らく昨日か今日、転勤だとしたら内示があったと思う。
どうだったんだろう。
気になるけど聞けないし⋯ 会いたかったな。
週末はいつもどおりデートをして家まで送ってくれた柊也に
｢寄って行く？｣と聞くと
｢いや、今日はやめとく。近いうちにお父さんの好きな酒とつまみ持って来るから。｣
そう言ってニッコリ笑いながら私の頭にポンッと触れて帰った。
あまりにもいつもと変わらない柊也。
転勤の内示はなかったのかな⋯
｢爽っ〜、おはよ！｣
｢月、おはよう。月曜から元気だね？｣
｢ねぇ、黒木なんか言ってた？｣
〝ううん〟と頭を横に振ると
｢そっか⋯ そうだよね。口外禁止だもんね、こういう時同じ会社ってキツイよ。｣
〝うん〟と今度は小さく頭を縦に振った。
青山さんも何も言ってないのか⋯ と思ったら
｢浩介には内示が無かったみたい。｣
バッと月を見る。
あ、そっか⋯ 転勤の内示があったとは言っちゃダメだけど無かったのは言ってもいいのか。
内示が無くてホッとしたとか家庭持ちの社員が呟いていたのを聞いたことがある。
自分の部署へ行き机に座ると月の言葉を思い返した。
｢浩介には内示が無かったけど黒木がどうかはわからないみたい。もしかしたら二人とも今回は異動がないってことも考えられるしって、浩介が⋯ ｣
あと、二週間。
来週の金曜日には正式に社内で人事異動が発表される。
恐らく柊也は異動になる。
そう心積りをして生活をすることにしたけど、それはとても苦しかった。
私の部署も年度末の忙しさは尋常ではなく、平日は殆ど会えなくなり、週末は柊也の部屋でゆっくりしたいと言っても何故か外で会うことになる。
引越しの荷造りを私に見せない為？と勘ぐってしまう私は正式な発表を前に
柊也は転勤するんだと確信していたーー。
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