プロローグ

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爽子(さわこ)さん、少し痩せましたか?式の前にダイエットする方は多いんですよねぇ。」 にこやかに優しく微笑んで私を見る女性。 「⋯はい、少しだけ。」 なんて⋯ 少しどころか痩せ過ぎて顔色も悪い。 「ドレスのサイズが⋯ 」 「大丈夫ですよ?その為の最終チェックですから。あと一週間で10kgくらい変動があったら困っちゃいますけどね?」 そう言いながらドレスの生地を摘んでいく。 「ふふっ、10kgは無理ですね。」 鏡越しに目を合わせて笑った。 「今日は新郎様はご一緒じゃないんですか?」 「ええ⋯、急な仕事で。」 「そうなんですね。結婚式からの新婚旅行で会社を長くお休みになると、仕事が忙しくなる方も多くて大変ですよね。」 私は視線を下に落とし 「えぇ、そうなんです。」 と言いながら 本当に仕事なのかな⋯ と考える。 「爽子さん、今はご実家ですよね?」 「はい。マコちゃんが昨日お母さんと一緒に結婚祝いを持って遊びに来たんです。」 「そうなんですね? 私も一週間後に会えるのが楽しみです。」 従姉妹のマコちゃんと、このブライダルの担当の中野ユミさんが仲の良い友達だと知ったのは結婚式の招待状を送った後。 とても話が盛り上がり、三人で食事をして私もユミさんと仲良くなった。 「爽子さん。お母様の美味しい手料理たくさん食べて下さいね?5kgは体重増えても大丈夫ですからっ。」 そう言って笑ってくれるユミさんは、年下なのに私よりとてもしっかりしている様に見える。 スッと背筋が伸び キリッとしていて凄く格好良い女性だ。 ユミさんもそして家族や親戚、友達も会社の人達も⋯ 皆んなが私達の結婚式を楽しみにしている。 余興や二次会は忙しい中、友人達が貴重な時間を割いて準備してくれた。 もう引き返すことは出来ないんだから 一週間後⋯ 私は誰よりも幸せな花嫁になるのよ。 鏡の中の自分に心の中でそう言い聞かせたーー。
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