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「ただで⋯ ですか?」
「そっ。人が住まないと家が痛むって言うし赤の他人には貸したくないって言うし⋯ でも俺だって他人みたいなもんなんだけどな。それで、姉貴が仕事でこっちに来る時は拠点にしてるって訳。」
「なんだか⋯ すごいです。あっ、前に空港で⋯ 結城さんと一緒にいた方⋯ 」
⋯⋯空港?
「あぁ、そうそう!あの悪天候の時な?あの時も姉貴に迎えに来いって言われて、本っ当に人遣いが荒いんだよっ。」
「私、結城さんの恋人は凄い美人でお似合いだなって思っていました。」
お似合いって⋯
え、ちょっと軽くショックなんだけど。
「あ〜 いや、俺が市内で女と一緒に居たっていう噂をもし聞いたらそれは全部姉貴だから。勝手な噂が広まってるだけで姉貴以外の女と二人で歩いたことはないよ。」
それは本当のことだから榛野に誤解されたくない。
そう言えば⋯ あの最初の初詣の日も確か姉貴といたし、ブライダルショップに入る時に美波に態と見せつけたのも姉貴。
あの時、美波以外の会社のやつらにもし見られていたら⋯ 考えただけで恐ろしい。
俺が結婚するって噂が独り歩きしただろう。
「結城さん⋯ あの⋯ お姉さん、私の名前知っててたみたいなんですけど気のせいでしょうか?」
「ん?あぁ、それはデイヴとロブだよ。」
「デイヴとロブが⋯?」
「そう、あの4人で食事した時からちょっとして姉貴が仕事で海外に行った時にさ、あっ!俺とデイヴ達の付き合いは長いから姉貴も仲良いんだ。もう俺が居なくても勝手に会って飲んだりね。」
〝ふふっ〟と小さく笑う榛野。
きっとデイヴとロブを思い出したんだろう。
「それで二人が榛野のことを事細かく話したみたいで⋯ 俺の会社にいる〝爽子ちゃん〟って名前だけはインプットされたらしい。」
「そうだったんですね。」
「実は⋯ 俺も榛野の研修の時のこととかたまに話してたから。」
「えっ!?」
「すごい真面目だって。あと、あの似顔絵のノートの話も⋯ したかな?」
「はぁ⋯ 」
「だから姉貴は勝手に榛野のこと知ってるって訳。」
俺は姉貴のことを説明して榛野も納得したみたいで安心する。
それから、お土産を渡して
「温かくして早く休めよ?」
「はい、今日はありがとうございました。」
〝うん〟と頷いてから
「また、トロふわオムライス食べに行こうな。」
と言うと嬉しそうに〝はいっ〟と言ったーー。
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