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ノックの音がして返答をする間もなく、リチャードがエドワードの私室に飛び込んできた。
「フィデス侯爵、無礼だぞ」
「それどころじゃない!王宮の門が革命軍に破られそうだ。早く隠し通路から逃げてくれ!ステファニー様も早く!王宮内には護衛騎士はもうほとんどいない。俺が扉を死守するから早く!」
慌てているリチャードに対し、エドワードはやけに落ち着いていた。
「余はすぐに逃げるから、そなたもすぐに逃げろ。扉の前にいる必要はない」
「でも・・・」
エドワードは戸惑うリチャードを扉の外へ押し出した。
「早く行け!そなたがここを立ち去らない限り、余は隠し通路に行かない」
「そんなわけにいかない!口論している暇はないんだ!早く!」
「それなら早く行ってくれ、リチャード。君が安全に逃げたと確証を持てなければ、僕達も避難できないよ。さあ、王宮の外でまた会おう」
「必ずだぞ。約束したからな」
リチャードは後ろ髪を引かれつつ、エドワードの私室前を立ち去った。
「ステフィー、内乱が終わったら、この離婚申請書を教会に提出する。ユージェニーは母国に帰国してもう戻ってこないだろうから、この離婚は認められるはずだ」
エドワードは、婚姻届とユージェニーが残していった離婚申請書をステファニーに見せた。いつものように窓際に座っているステファニーはエドワードのほうを向いたが、その瞳は彼を映していなかった。
「・・・」
「君の分の離婚申請書もある。さあ、署名して。内乱が終わったらそっちもなんとかするよ。そうしたら結婚しよう」
エドワードは夫の署名欄が空白のままの離婚申請書をステファニーに見せ、ステファニーの手をとり、ペンを握らせたが、ステファニーは反応しなかった。
「トビーのために署名して」
「トビーのため・・・?」
「そう。こうだよ」
エドワードはステファニーのペンを持つ手をとって署名させた。
「ステフィー、これを君に贈るよ」
エドワードがステファニーの指に嵌めたのは、代々王妃に伝わる指輪だった。ユージェニーが王宮脱出の際に離婚申請書とともに置いていったものだ。
「これで君は私の妃だ」
エドワードは愛おしそうにステファニーの頬を撫でてキスした。
「今日は初夜だ。君を妻として抱きたい」
「・・・」
「大丈夫、すぐ済ませるよ。ごめんね、本当はゆっくり君と愛し合いたかったんだけど。時間がなくても最後に王宮で王と王妃として愛し合っておきたいんだ・・・」
「んんん・・・あああ・・・」
エドワードは立ったままステファニーの唇と舌を堪能し、首と耳を舐めた。片手でドレスの上から乳房を愛撫して、もう片方の手はドレスの下に侵入してドロワーズの中に入った。
「もう蜜を溢れさせているね。毎日愛し合ってるかいがあった」
エドワードはステファニーを後ろ向きにさせ、壁に手を着かせた。ドレスを腰までたくし上げ、ドロワーズを引き下げて後ろから屹立した陰茎を挿入し、律動を開始した。
「ああっ、ステフィー、気持ちいいよ!ごめんね、ゆっくりできなくて」
静まり返った部屋で腰を尻に打ち付ける音と水音が何度も響いた。
「ああっ、はうっ!ステフィー!ステフィー!もうイくよ!ああっ!うっ!愛してるっ!」
エドワードの男根はどくどくと脈を打ちながら子種をステファニーの子宮奥に放った。その後も少し余韻に浸ってエドワードはステファニーを抱きしめた。
「ステフィー、ありがとう。愛してるよ」
エドワードはステファニーのドレスを直して頭にティアラをかぶせ、自分も王冠を被って王笏を持った。
「さあ、秘密の通路へ行こう」
戸棚をスライドすると、秘密の通路に繋がる扉が現れた。ステファニーはエドワードに手を引かれるまま、秘密の通路に入って行った。秘密の通路は石造りで埃っぽく、蜘蛛の巣も張っており、ステファニーのドレスの裾はすぐに黒くなった。
しばらくすると出口側から何人もの足音が響いてきた。エドワードは通路の途中で石壁を押し、別の通路へ入った。その通路は謁見の間に続いていた。
「ステフィー、ここに座って」
誰もいない謁見の間でエドワードは玉座に座り、隣の王妃の椅子にステファニーを座らせた。
「君は僕の妃だよ」
エドワードは嬉しそうにずっとこうしたかったと伝えた。
「ねえ、僕の膝の上に来て」
ステファニーは、ここまでエドワードになされるままで自分では動かず、何も話さなかった。エドワードはステファニーを抱き上げ、玉座にもう一度座って膝の上に乗せた。
「ああ、ステフィー、僕は嬉しいよ。君は僕の妻だ。愛してる」
「・・・」
「ねえ、僕を愛してる?結ばれてからまだ一度も愛の言葉を聞いてないよ」
エドワードは愛おしそうにステファニーの唇に自分の唇を重ね、舌を割り入れた。
「ああ・・・はぁ・・・」
遠くから怒号と足音が聞こえた。それは次第に近づいてくるようだった。
エドワードは名残惜しそうにステファニーから唇を離した。それと同時にエドワードは何かを噛み砕き、もう一度ステファニーに口づけ、唾液を流し入れた。ステファニーの喉がこくりと動く様子を見るとエドワードはステファニーに愛を告げた。
「ステフィー、愛してる。君の気持ちも聞かせて」
「エド、愛して・・・」
ステファニーの瞳に光が戻り、その口は愛の言葉を紡ごうとしたが、最後まで口にする前に彼女の身体からするりと力が抜けた。エドワードはステファニーを落とさないよう、腕に力を込めようとしたが、もう力が入らず、2人とも玉座から床に崩れ落ちた。エドワードの手からは私室から持ってきた2枚の離婚申請書と婚姻届がはらりと床に落ちた。
その直後、謁見の間に急いで駆け付ける足音が響いた。
「ああ、なんてことだ!遅かったか・・・」
すんでのところで革命軍を押しのけて入城してきたソヌス王国騎士団が謁見の間になだれ込んだ時には既に遅く、2人はこと切れていた。享年24歳と26歳、あまりに若過ぎる死であった。
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