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エピローグ
「ユージェニー、王宮の謁見の間からエドワード殿とアンヌス伯爵夫人が遺体で見つかった」
「そうですか・・・ルクス王国の王族も殺すつもりはなかったのに――最期まで馬鹿な男ね。よいことも悪いことも生きてさえいれば、なのに・・・」
ユージェニーは後半の言葉を囁くようにつぶやいたので、ルイには聞こえなかった。
「お前もルクス王国の王族だったからな。でもそれももう縁が切れてさっぱりした!だが、あいつは最期までお前を軽んじた!腹立たしくないか?」
「お兄様、私は随分前にもうあの方を見限っていたのです。一度は愛した方ですから、亡くなって悲しいとは思います。でもそれだけです」
「そうか・・・お前は強いな。これは遺体と一緒に見つかった。教会に提出するか?」
ソヌス王国王ルイがユージェニーに見せたのは、エドワードが謁見の間まで持って行ったユージェニーとの離婚申請書だった。ルイはステファニーとエドワードの婚姻届とステファニーとエイダンの離婚申請書ももう片方の手に持っていたが、そちらはくしゃりと握りつぶしていた。
「教会に提出するまでもないですわ。あの方はもう亡くなったのだから、私は自由」
「離婚申請書を出さないとお前は未亡人という扱いになるがいいのか?」
「未亡人でも、離婚経験のある女性でもどちらでも私は構いません。でも、死後の離婚申請は色々面倒だと聞いています。そんなことに労力を割くよりも、ルクスの復興が先です」
「そうか、お前は王妃だったからな。ルクスを総督として治める気はあるか?」
「まぁ、本当に?!是非とも!」
「だが正式決定は、重臣会議で可決されてからだ。まぁ、お前の実績で否決されることはないと思うがな。それよりも再婚相手を探すか?」
「いいえ、結婚はもう結構ですわ!」
ルクス王国はソヌス王国に併合され、ソヌス王国から総督が派遣されることになった。その初代総督には無事に重臣会議で承認された王妹ユージェニーが就任した。在任中、彼女は結婚に懲り懲りだった考えを一転させた男性と再婚することになる。
ソヌス王国は、女性でも財産や家督を相続できる本国の法をルクスでも適用し、品種改良や農地改革も行って民衆の生活水準を上げたので、人々はソヌス王国の支配を喜んで受け入れ、民主化運動は下火になった。
教会の教えでは自殺は罪であるので、エドワードとステファニーは獄死とされた。彼らは後の歴史書で『愛欲に溺れた愚王』と『ルクス王国最後の王を誑かした稀代の悪女』と呼ばれた。そこに至った遠因であるステファニーの誘拐事件については何も記されることなく、人々の記憶には2人は愚王と悪女としてしか残らなかった。
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