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それから200年後――ソヌス共和国首都の国立博物館は、とある学校の生徒達の社会見学を受け入れていた。
あどけない顔をした少女達が、次の展示室へ進むクラスメイト達を横目に、古い文書の展示ケースをのぞき込んでいた。
「あっ、これってこの前、歴史の授業で習った『愛欲に溺れた愚王』と『稀代の悪女』の婚姻届じゃない?なんだかくちゃくちゃに皺寄ってるけど」
「プハッ、『愛欲に溺れた』って!何それー!そんな風に教科書に載ってるわけないでしょ?!」
「そうだっけ?この2人って最期まで結婚できなかったんだよね?」
「ダブル不倫だったからねー」
「でも王様って妾が選り取り見取りだったんじゃないの?」
「そうだろうねー」
「ねえ、見て見て!このダイヤの指輪綺麗!でっかい!いくらするんだろう?」
「きっととんでもない値段だよ。代々ルクス王国の王妃に伝わってた指輪なんだって」
「でもこの指輪、悪女が死んだ時につけてたって書いてある」
「ええーっ!王妃じゃなかったのに?」
「図々しいよねー」
「もうそんな指輪、縁起悪くて付けられないね」
「買えないからそんな心配いらないって!キャハハハ!」
本当!と少女達は声を合わせて叫んだ。その途端、大人の見物客にじろりと見られて声を潜めた。
「ねえ、見て・・・離婚申請書もある・・・ルクス王国最後の『愚王』と後に総督になったお妃様のと、悪女とその夫のだって――どれどれ、悪女の夫のサインは入ってないって書いてある」
「やだなー、そんな結婚!」
いつの間にか再び声を大きくした少女達はまたキャハハハと笑いながらクラスメイト達を追って去っていった。婚姻届と離婚申請書、ダイヤの指輪が並べられた展示ケースは再び静寂に包まれた。
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