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45.修羅場
ブライアンの暴行の後、数時間してエイダンは何も知らずに視察から帰ってきた。予期せず本邸にいたエスターが半狂乱になって訳のわからないことを叫び続けているのに驚き、すぐにステファニーの寝室に駆け付けた。ステファニーは寝台に身を投げ出して目が真っ赤になるまで泣き続けていた。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい・・・」
「どうしたんだい、ステファニー?エスターがまた君に何かしたのか?」
「私は旦那様に愛してもらう資格ない!穢れているからっ・・・うううう・・・」
「そんなことないよ。どんなことがあっても君を愛してる。だから言ってごらん?」
エイダンは寝台に腰掛けてステファニーの頭を撫でながらやさしく言った。
「・・・ブ、ブラ、イアンが・・・私をっ!・・・ううううーっ・・・」
「ブライアンが何したんだい?」
ステファニーが泣き続けてそれ以上何も言わないので、エイダンは使用人達に事の次第を聞きに行った。話を聞くとエイダンの顔色が変わってブライアンの寝室に飛び込んだ。
「ブライアンッ!何でこんなことしたんだ!」
返事を聞く前にエイダンは怒りを抑えきれずにブライアンを殴っていた。
「息子と同世代の女を娶って鼻の下を伸ばしている親父に復讐したのさ」
「な、何を言ってるんだっ!」
「娼婦の息子、愛人の息子って学校でも使用人達にも蔑まれても、俺は頑張ってきたんだ!なのにお前は、ぽっと出の傷物お嬢様を娶って夢中になって母さんを捨てた!」
「結婚は王命だったんだ!ステファニーには何の罪もないだろう!俺の心変わりが悪いだけだ」
「ああ、お前が悪い!」
「何言ってるんだ!お前はもっと悪い!犯罪者だ!」
「息子が妻を強姦しましたって騎士団に突き出すか?」
「ぐっ・・・」
こんなことを王家やステファニーの実家エスタス公爵家に知られるわけにはいかなかった。
「お前は母親と別邸で病気療養だ」
「・・・という名の幽閉ね」
「おちゃらけているんじゃない!お前、エスターを別邸から呼んでわざとあの痴態を見せたんだろう?なぜだ?」
「さあね。俺もわからないよ。こんなクズ男に20年も執着していた母親が情けなくなったのかもね」
ブライアンのへらへらした口調と表情がますますエイダンの怒りを買い、エイダンはまたブライアンを殴りつけ、拳がブライアンの鼻血で赤く染まった。
エイダンはこの醜聞を表沙汰にしたくなかったので、ブライアンを公式には廃嫡にできなかった。ブライアンとエスターは、見張りを付けた別邸で軟禁されることになった。ブライアンの寝室に駆け付けた侍女達は噂を広めないようにブライアンとエスターの別邸へすぐに送られたが、伯爵家の使用人達の中に噂が広まるほうが早かった。
アンヌス伯爵家は警備にそんなに費用をかけられないので、見張りの量と質は言わずもがなだ。軟禁開始から間もなくブライアンは、見張りを突破して秘密裡に時々外出するようになった。
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