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53.候補者達
リチャードがリストアップした『王妃の話し相手』候補達の中から、爵位と家門の政治的立場を踏まえて15人まで候補を絞り、エドワードはユージェニーにリストを見せた。ユージェニー主催でお茶会を開いて最終的に6人選んでもらうことになった。
「エドワード、本当に私の話し相手を召し上げるのね。私はそんなことしなくても普通にお茶会で友人を作れるわ」
「でも今まで作れていないだろう?」
「ま、まぁ、それは確かにそうだけど・・・友人でなくても王妃と臣下の妻達の間に信頼関係ができればいいでしょう?こんな計画、とても正気と思えない。民衆からも、夫人を召し上げられる貴族からもますます反感を呼ぶでしょう」
「『王妃の話し相手』は強制ではない。なりたいと思った夫人だけが選考を兼ねるお茶会に来るんだ。侍女のようなものだから、民衆の反感は呼ばないだろう?」
「どうでしょうね?お茶会と名付けられた選考会に王家から招待されたら、たいていは強制的な王命と思うでしょう?」
「いや、招待状には王命ではない、辞退できると明記する」
「それでも王家から招待が来たら普通は辞退できないわよ。それに『王妃の話し相手』は所詮、王の愛人候補と思われるのではないですか?」
「臣下の妻を奪い取る趣味はない。それにそんなことは教会が許さない」
「でもステファニー様が候補に入っているではないですか。アンヌス伯爵家はタウンハウスも持ってないし、下のお子さんが生まれたばかりだから、王宮に召し上げるのは酷ではないですか?」
「アンヌス伯爵家みたいに財政的に厳しい家の夫人を候補に入れたんだよ。王宮にも部屋を用意するから経済的に負担にはならないはずだ」
「負担になるのは住む場所だけではありませんわ。そのような家の方は王妃のお茶会に着るドレスを用意するのも負担ではないですか?特に領地住まいの方は交通費や宿泊費用もありますし。ステファニー様もそうですわね?」
「ドレスと旅費は王家のほうで負担することにしている。領地住まいで王都にあまり来たことのないご夫人方には楽しみにしてもらえるのではないかな。特にアンヌス伯爵夫人は結婚以来、精神的にまいっているようだ。彼女は王都で育ったから、それで気が晴れるならと思って。彼女は確かに婚約者だったけど、今は幼馴染として役に立てればいいと思っている。だから他意はないよ」
「そんなに言い訳がましくいろいろ言わなくても大丈夫です」
「とにかく信じて」
ただの幼馴染としてエドワードがステファニーを『王妃の話し相手』候補にしたとはユージェニーには思えなかった。結婚したばかりの頃だったら、ユージェニーは嫉妬で苦しんだだろう。でも、むごい閨での扱いを経験してエドワードを慕う心が段々すり減った今となってはどうでもいい心境になっていた。
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