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57.念願の再会
『王妃の話し相手』として貴族夫人を王宮に召し上げるエドワードの考えにユージェニーは本心では同意できなかった。でも押し切られた以上、選考会を兼ねるお茶会は成功させようと招待される夫人達16人の名前と家庭環境、家門の政治的背景などを徹底的に覚えた。
そして迎えた当日――なぜか招待した16人よりも5人も多い21人の貴族女性が揃っていた。その場には、社交界デビューしたばかりではないかと思われるような、あどけない少女が5人もいた。もちろん5人全員、未婚の令嬢である。
本来招待されていた夫人達は、下は18歳から上は25歳までの若い既婚のご婦人方である。彼女達は、家が落ちぶれつつあっても、見目麗しくユージェニーの話し相手にふさわしいように教養もなければならない。それに王家派と貴族派、どちらに偏ってもいけない。その基準にかなった16人なのだ。最も、教養よりも野次馬根性のほうがしっかりあるご夫人も一部入っているようだったが、ユージェニーは目を瞑っていた。
ユージェニーは、令嬢達と話してそれとなく招待の背景を探った。エドワードとユージェニーのように、結婚後5年以上経っても子供がいない場合、国王と王太子だけは側妃を娶ることができるようにルクス王国は教会と協定を結んである。それで有力貴族達が自分の娘を側妃候補として送ってきたようだった。後でわかったことだが、彼らは『王妃の話し相手』がエドワードの愛妾候補だと思っていたので、愛妾候補を出し抜いてエドワードに気に入られるように娘達に言い含めていた。
ユージェニーが全員と一通り話した頃、お茶会を開いているサロンの扉がノックされた。侍従が扉を開き、『国王陛下の御成りです』と告げた。ユージェニー以外の全員が予想外の国王の訪れに驚き、特に未婚の令嬢達は若くて見目麗しい国王エドワードの登場に明らかにそわそわし始めた。
エドワードはサロンに入ってすぐステファニーに気付いた。実に5年振りの再会だった。まるで彼女の他に誰もいないかのように彼女しか目に入らなかった。
(ああ、ステファニー!君はあんな目にあっていても美しい!なんて健気なんだ!一刻も早く野獣から解放してあげるから待ってて!)
ステファニーもエドワードの視線に気付き、2人の目が合った。
(エドワード様・・・)
でもステファニーはエイダンやユージェニーのことに思いを馳せ、すぐに視線をはずして下を向いた。
2人には随分長いこと視線を合わせていたように思えたが、実際には10秒も満たなかった。だからお茶会の参加者は2人の目が合ったことに気付いていなかった――ユージェニーとその場に控えていたミッシェルとジャンを除いては――
エドワードはステファニーから目をはずすと、自らが招待したよりも多くの女性がお茶会に参加していることに気付いた。エドワードはすぐにその目的を察して不快になったが、そこは流石に子供の頃から感情を顔に出さない訓練を受けていたこともあって、表情に出さなかった。エドワードは一通り全ての参加者に挨拶をし、夫人達とは少し話をしたが、未婚の貴族令嬢達とは挨拶以上の言葉を交わさずに退出し、まもなくお茶会は終了した。
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