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59.問題児ならぬ問題夫人達
ミッシェルは、ステファニー以外の『王妃の話し相手』についても疑問を口にした。
「アンヌス伯爵夫人以外の話し相手も、この3人はちょっと問題がありませんか?」
「ああ、カエルム男爵夫人とトパルキア子爵夫人のこと?まあ、ちょっと噂好き過ぎるかもしれないわね。でも退屈しのぎにいいかと思って。夫に放置された妻は退屈してるのよ」
「・・・でもあのご夫人達は噂話をしに王宮に召し上げられるのではございません。姫様のご負担になるのではございませんか?」
「大丈夫よ。あんまり酷かったら、あの侍女長が雷落とすでしょう?」
侍女達の振舞いにいつも厳しい侍女長の顔がすぐに浮かび、ミッシェルとジャンも納得した。
「姫様、それではアウトムヌス公爵夫人は?あの方はマナーに厳しいから、カエルム男爵夫人やトパルキア子爵夫人とは水と油の仲になりそうです。退屈しのぎどころか、場を収めるのに姫様が苦労されるのではないでしょうか?」
「そのぐらいなんてことないわよ。かえって楽しめるわ」
「でも彼女は貴族派筆頭のアウトムヌス公爵の奥方です。諜報員の真似事をして王家を嗅ぎまわるのではないでしょうか?」
「ミッシェル、貴女は王家がこのままでいいと思ってる?正直言って私の話し相手を選ぶよりも優先しなければならないことはたくさんあるわ。それに女性を集めるんだったら、側妃候補を集めるほうがいい。このままでは娘を側妃にしようとする貴族達と息子をエドワードの養子にしようとするヴェル公爵夫妻が暗躍するだけよ」
「それとアウトムヌス公爵夫人が何の関係があるのでしょうか?」
「この危機的な状況でこんな愚策を通せるのは、王の権力が強いからよ。でもこのままでは、民主派が革命を起こしてこの国は共和国になってしまうかもしれない。そうなったら王妃の私は逃げおおせなければ処刑でしょうし、隣のソヌス王国にも革命の影響が波及するわ。その前に貴族の合議制政治を取り入れるのよ」
「し・・・処刑!姫様をそんな目に遭わさせません!私は安全な所まで姫様を守り通します!」
ジャンが深刻な様子でそう言うと、ミッシェルも姫様を守り通すと誓った。
「姫様、アウトムヌス公爵と手を組むのですか?」
「それは相手次第ね」
ミッシェルが疑問に思った3人とステファニーを除いた残りの2人は、可もなく不可もなく影が薄い。最終的に『王妃の話し相手』はユージェニーが選んだ通りの人選となった。
タウンハウスを持つ高位貴族の夫人も含めて『王妃の話し相手』に選ばれた6人全員が王宮に個室を得た。それとは別にエドワードは夫婦の寝室から離れた自室の隣に秘密裡にもう1部屋をステファニーに用意した。だが、秘密だと思っていたのはエドワードだけで、ユージェニーはミッシェルとジャンのおかげでそのことを掴んでいた。
ユージェニーは、エドワードの心が自分にないことにもはや全く動揺していなかった。ミッシェルとジャンも、ユージェニーがステファニーを王妃の話し相手に選んだこと自体は気にしなかったものの、王妃をこけにするようなエドワードの仕打ちに憤っていた。
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