異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件

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 とぼとぼと部屋に帰ってきた俺は、完全に意気消沈していた。どうして初対面の人間に殺害予告を受けなきゃいけないんだよ。あっそうか。初対面ではないという設定なのか。原作観てねえから関係性がわからないっつーの。  このままだと入学するのが憂鬱になる。先が思いやられる。  現実世界でも、異世界でも俺はうまくやれない。現実でも社会不適合、異世界でも社会不適合なのか。  長い時間、落ち込んでいると、メイドが部屋のドアをノックしにきた。思わず背中がビクッとした。  ノックの音が大きすぎる。ドアが壊れるっつーの。 「失礼します、パオロ様ー! パオロ様? あのう、晩御飯のお時間になりましたのでお知らせに参りましたー! パオロ様?」 「あ、ああ」 「ん? パオロ様、どうしたんですか? 元気ないみたいですけど、ロベルト様となんかあったんですか?」  部屋に入るなり、メイドは可愛い顔して俺の顔を覗き込んでくる。ったく。こいつ。可愛いければなんでも許されるってもんじゃないからな? デリカシーってモンがないのかよ。  俺は意地でも顔を上げない。メイドは意地でも俺の顔を見ようとしてくる。イタチごっこに負けたのは、俺の方だった。  笑ってしまった。少し場の雰囲気が和んだ。この子は、不思議な魅力を持っている。そう感じた。 「メイド。正直に言うよ。私は春から、本家バルドナードのルイス様と同級生になるんだ」 「えっ! すごい! じゃあ、おふたりとも剣術科ってことですか? 私、以前聞いたんですけど、ギルバート帝国学院剣術科って、必須科目に決闘があるんですよね?」 「ああ。有名な話だ」 「死んじゃう人もいるとか…」 「問題はそこなんだよ。話を整理すると、私は春からギルバート帝国学院剣術科に通うことになる。これはバレンシア家嫡子の使命だ。そこで奇しくも、本家バルドナードの嫡子、ルイス様と同級生になることに」 「いいじゃないですか!」 「話は最後まで聞け」 「んもう! パオロ様ったら、完結にまとめてくださいよー!」 「わかった。では一言で話そう。私はルイス様に殺害予告された。以上だ」  ドヤ顔で言ってのけた。少しは気の毒がられるかと思ったら俺の予想は見事に外れた。メイドは目をまんまるくさせ、きょとんとしながら俺を見つめていた。 「えっ、決闘なんだから当たり前なんじゃないですか?」 「えっ」 「ルイス様に殺されたくなかったら、パオロ様がルイス様を殺せばいいのでは? もちろん、決闘で」  言い終えると、メイドは剣を振り回す真似をした。そうか。殺害予告なんて甘ったれたこと言っている場合ではなかった。  こんな意識の低さでは、バレンシア家の名誉に傷がつく。ていうか、バレンシア家ってなんだよ。意味わからない。まあその問題は今は置いておくにしてもだ。 「まあいいや、晩御飯行きましょう?」  メイドは走って、俺の部屋を後にした。なんなんだ、あいつ。俺はメイドがいなくなった部屋で1人、呆然と佇んでいた。しかし、こうしてはいられなかった。俺には命がかかっているからだ。
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