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「決闘」のイベントの後、俺はバルドナード家のごたごたに巻き込まれて、あとはバレンシア家の当主になったばかりということもあって、その年の残りは1日も学校に行けていなかった。
そういう事情があるので、今日は久しぶりの登校。教室に入って、みんなに挨拶した。みんなはあたたかく迎えてくれた。
いつも元気に挨拶してくれていた親友のキンカーの姿はもちろんなかった。わかってはいたが、あまりに悲しい。でも、今は前を向くしかない。キンカーのためにも
いつもの廊下側の1番後ろの席に座ってぼおっとしていると、何者かに椅子ごと蹴り上げられ、俺の体は宙に舞い上がった。おい! なにが起こっているんだ!?
「アタシの席に勝手に座ってんじゃねーよ!」
「アンタは」
「ブルーナだよ! 決闘女子部門優勝のブルーナ! ったく、バレンシアだかバレンタインデーだか知らんけど、ポンコツじゃねーか!」
どうして「バレンタインデー」なんて言葉が口から出てくるんだよ。物凄い確率の奇跡だな。
「やめなさい!」
ブルーナを止めに入ったのは、あら懐かしい、「決闘」の俺の二回戦の対戦相手、シュミートだった。
「ブルーナ君! バレンシア君は、久しぶりに学校にきたんですぞ! そんなバレンシア君にも手を出すなんて、見境なさすぎますぞ!」
「うっせーなガリ勉クソメガネ! おめえ決闘ン時こいつから逃げたから未だにビビってんだろ? ッハハ。だっせー!」
「あー! 言いましたな! この委員長、カーブ・シュミートに向かって!」
「委員長だかなんだか知んねえけど、うっせーんだよ!」
そう言って、ブルーナはシュミートの腹を蹴り上げた。シュミートは一瞬怯んだが、今度はブルーナに掴みかかった。もう逃げたりはしないらしい。そうか、今はシュミートが委員長なのか。全然知らなかった。
ていうか、クラスのみんなはこのケンカを見ても止めないどころか、にやにや笑って見ているあたり、こういうやり取りはいつものことらしい。でもでもでも、あのー。ホームルームもうそろそろ始まる時間だと思うんですけど…。
「お前らやめるべ!」
ほら、言わんこっちゃない。担任のマルイが怒鳴りながら教室に入ってきた。ブルーナとシュミートはさすがに言うことを聞き、シュミートは俺に席を案内してくれた。俺はシュミートの隣だった。
「ったく、こんな日に。お前ら何やってんだべ! 今日だけはこういうことやめろっつったべ? せっかく久しぶりにパオロに会えたんだからよ」
そう言って、マルイは俺の方を向いた。
「パオロ、復学おめでとうだべ」
クラスのみんなから、拍手があがった。少しだけ、目頭が熱くなった。
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