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「ブルーナ!」
ブルーナは得意気な顔をしながら部屋に入ってきた。おいおい…。何してくれてんのコイツ? まあ、怖くて何も言えないけど。椅子ごと蹴り上げられてるし。
トホホ…。寮長に大目玉くらうよ…。しかしながらそんな弱気な俺をよそに、シュミートは勇敢に立ち向かっていた。すごいぞ、シュミート! 成長したな!
「ブルーナ君! ここは男子寮! 女人禁制ですぞ!」
思わず、ズッコケた。どれだけ堅物なんだよ。絶対問題はそっちじゃないだろうが。
「おい、パオロ。お前何寝てんだ? まだ夕方だぞ」
そう言ってブルーナは、部屋の真ん中に堂々とあぐらをかいた。
「いや〜、シュミート、おめえかてえこと言ってんじゃねえよ。ホラ、アタシはさ、パオロに魔物サバイバルについて教えたげようと思ってきたのさ。アタシ、優しいだろ?」
まあ、それが本当にそうなら優しいが、ドアぶっ壊すことないんじゃないですかね…。
「あ? なんだ? パオロ。なんか文句あんのか?」
「いえ、何も」
怖くて何も言えない。
「でもよ、シュミートがいるならアタシはお役ごめんだな! いいぞ、シュミート、説明しな!」
「やれやれまったく。仕方ないですね」
シュミートは、ため息混じりに続けた。
「魔物サバイバルとは、ギルバート帝国学院剣術科最大のイベントです。もちろん必須科目です。内容は、1日ジャングルに閉じこもって、色んな魔物と闘う、というものです。魔法のみの技を使った時点で失格。剣術絡みの魔法ならOK。これは剣術科ならではですな」
「それって、どうなったら合格で、どうなったら落第なんだ?」
「パオロ君、いい質問ですぞ。答えは簡単。1日ジャングルで過ごし、生き残れたら合格。死んだら落第ですぞ」
シュミートはまた得意の、メガネを人差し指でクイっと直すしぐさをして見せた。
「死んだら落第」って、死んだら落第もクソもないんじゃないですかね…。
「ふぅ〜! カッコいいぞ、シュミート!」
ブルーナが囃すと、シュミートは顔を真っ赤にさせ、挙動不審になった。こいつ、かなりわかりやすいな。そしてそんなシュミートを見て、ブルーナは声高らかに笑う。そのせいでシュミートが我に返り、ブルーナにケンカを吹っかける。ブルーナはシュミートを蹴る。
掴み合いのケンカが始まる。おいおい、朝のデジャヴかよ、今日2回目だぞ。こいつら、いつもこんな調子なのか? だとしたら相当仲良しだな。ケンカするほど仲が良いって言うもんな。でも、その言葉を口に出して言うのはやめておこう。2人から袋叩きにされるに決まっている。
2人の矛先がこっちに向かないように、俺はこっそり部屋を脱出し、寮のまわりをぐるりと散歩することにしたのだった。
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