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あれから数日、俺はよくシュミートと話したし、ブルーナに蹴られた。なんだかんだ、もちろん不満もたまにはあるし、「魔物サバイバル」が差し迫っているという不安もあるが、概ね楽しくやっている。学校がこんなに楽しいということに、今まで気づかなかった。
「そういえばパオロ君、チミは剣はどんなものを使うのですか?」
「え? 剣?」
「シュミート、お前、馬鹿だな! パオロはな、バレンシア家の当主だぜ! 代々騎士の家系だ! いいもん使うに決まってんだろうよ!」
「考えたことなかった。今回は自由なのか…?」
予期せぬ返答だったのだろう。シュミートとブルーナはお互い顔を見合わせ、それから俺の方を見て目を丸くした。
「ちょっと鍛冶屋行ってくるわ…」
その日の放課後、寮に戻り、早速自分の部屋に戻った。ドアの件は案の定、寮長にこっぴどく叱られ、しばらくそのまま、ドアなしの生活を命じられた。
部屋の前までくると、中にいるブルーナと目が合った。ブルーナはあぐらをかいたまま腕を組み、こちらを睨みつけている。男子寮に堂々と入ってこれる図太い神経は、見習いたいものだ。っていうか、廊下から丸見えじゃん。変な噂が立つからやめてほしいんですけど。
「俺の部屋で何してるんだ?」
「さっきはよくもアタシに恥かかせてくれたな!」
「え? まさか、剣のことか? 気にすぎだって」
しかし、俺が笑いながら言ったのが気に入らなかったのか、ブルーナは立ち上がり、部屋に入ったばかりで入り口の近くにいる俺に向かって歩いてきた。
「しゃらくせえ!」
やばい! 蹴られる! 俺は主人公らしくブルーナの蹴りを華麗に交わす。すると今度はブルーナの方が体勢を崩してしまった。
「おっと」
背中を支えてやる。気づくと、俺とブルーナの顔は目と鼻の先の距離になってしまっていた。
「あ、ありがとう」
「い、いや…」
やべえ。近くで見たら初めて気づいた。ブルーナ、超絶可愛い。しかもいいにおいがする。ブルーナは、顔を赤らめ、恍惚とした表情を浮かべている。このままキスができてしまいそうだ。そう思うと、胸がときめく。ブルーナの背中からも、支えている俺を通してドクンドクンという速い音が聴こえてくる。何これ。何この時間。
そう思った瞬間だった。
「パオロ様ーっ! 剣の用事でって、あ…!」
まずい! ミョージャだ! ミョージャにはシュミートが女人禁制だとか言って追い返していたのに俺は…!
あ! というか、今のこの状況! やばい、絶対誤解される!
俺は慌ててブルーナから手を離した。しかし、時既に遅し。ミョージャは今にも泣き出しそうな顔を浮かべていた。
「お取り込み中のところ、お邪魔いたしましたッ…!」
ミョージャは走って逃げていった。
「ミョージャ! 待ってくれ!」
しかし、待ってくれるはずがなかった。
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