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あああ! これは…! 例のやつでは?
一瞬で状況を理解した。俺は転生した。どうしてかわかるかって? 理由は簡単だ。自分の視界が狭い部屋のゴミの山から、中世ヨーロッパ風の小綺麗な景色に変わったからだ。まさか俺にも、こんな日がくるとは。
異世界転生のアニメはよく観るが、まさか自分が転生することになるとは、思いもよらなかった。もっともこんな非現実的な大イベントに対しても一切テンションの上がらない俺もどうかと思うが…。
ちょうどいい。ついさっきまで親父に働け働けと怒鳴られていたところだ。家族にも厄介者扱いされている俺にとっては、異世界転生はもってこいだった。
「パオロ様! お父様のロベルト様がお呼びです!」
ドアをノックする音がする。多分だけどこいつはメイドだな。まあ、モブキャラってとこだろう。
それにしてもパオロって俺のことか? やれやれ、我ながら理解が早い。アニメの見過ぎってやつか。作者にとっては便利なキャラだ。
パオロが出てくるアニメってなんだったっけ。パオロなんて主人公が出てくるアニメはないよな。てことは俺、少なくとも脇役以下決定かよ! トホホ…。40歳のニートをさ、せめて転生先では主人公にしてくれたっていいんじゃないですか?
やれやれ。そんなこと考えたって仕方がない。パオロがなんなのかよくわからんけど、とりあえずこの部屋を出ないことには始まらないもんな。
いや、待てよ。パオロってどういうキャラなんだ? それすらわからん。メイドにどう対応したらいいんだろう。まあ、いいか! 案ずるより産むが安しっていうよね!
バタン!
「あいよ!」
「パ、パオロ様!? どうなされたんですか! いつもとテンション違い過ぎます…!」
「あ、そうだっけ? ゴ、ゴホン。細かいことは気にするな」
「はっ! 申し訳ございません!」
メイドは深々と頭を下げた。やべ、なんか申し訳ないな。てかよく見るとめっちゃ可愛いじゃん。
「父上はなんと」
「はい、パオロ様の進路についてお話があるそうです」
「わかった。お前はもう行ってよろしい」
「は、はい! では、失礼します!」
メイドは恐縮しながら去っていた。やべ、この感じ、めっちゃ気持ちいいかも。
とりあえず、メイドに言われた通り、親父の部屋に行ってみることにした。どうやら俺は自分が観たことないアニメの世界に転生してしまったみたいだ。それはそれで面白いかも。
俺は豪華絢爛で広大なお屋敷の廊下のど真ん中を恭しく闊歩しながら、父親の部屋に向かった。
「父上、パオロです。失礼致します」
ドアを軽くノックする。やべ、就活を思い出してなんか嫌だな。あの頃は地獄だったな。トラウマが昨日のことのように蘇ってくる。
でもまあいいや、今はそんなことを思い出している場合ではない。
「入れ」
太い声がする。なんだか怖いな。恐る恐る部屋に入ると、そこには見たことのある人物がいた。
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