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話を終えた私たちは部屋を出て朱里さんに蒼さんを呼んでもらうように頼んだ。
「んだよ、帰るつもりか」
「はい。薫さんが迎えに来てくれたので」
「……」
私たちは共に手を握り合って蒼さんの前に出た。
「蒼さん、ルイカは僕のものだから」
「……」
「はい。私は薫さんのものです」
「……」
「もう絶対にルイカに手出ししないで」
「……」
「しませんよね? 蒼さん」
「……おまえら、本当に鬱陶しいな! とっとと帰りやがれっ」
「え、蒼さんは? 一緒に帰らないんですか?」
「オレはもうしばらく此処で仕事して行く。──ほら、薫」
そういって蒼さんは薫さんに何かを投げた。
「車貸してやるから自力で帰れ」
それだけ言うとサッサと私たちの元からいなくなった。
「……蒼さん」
蒼さんの気持ちを考えるとほんの少しだけ胸が痛んだ。どこまで本気か分からないけれどこんな私に好意を寄せてくれたのにやっぱり私は薫さんを選んだ。
「ご心配には及びません」
「……え」
少し離れた位置に控えていた朱里さんがいつの間にか傍にいた。
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