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寸でのところで薫さんに抱きかかえられ、いつの間にかお姫様抱っこをされていた。
「はぁ……もう限界。ルイカ、君の全てが欲しい」
「!」
「もうずっと……ずっと欲しくて堪らなかった」
「か……薫、さん」
「嫌? ルイカはまだそんな気持ちじゃない?」
「……」
薫さんは真っ直ぐ見つめながら優しく問うた。
(そんなの……聞かれるまでもなく決まっている)
既に私の中では蒼さんの別荘でのキスから覚悟が出来ていた。
「ルイカ」
「……私、も」
「え」
「私も……薫さんが欲しい」
「!」
「薫さんの全てが欲しい……です」
「ルイカ」
とても恥ずかしいことを言っていると思う。今までこんなことを言う機会も経験もなかったからどうしたらいいのか戸惑ってしまうけれど、それでも──
「薫さん、私を……もらってください」
「……嬉しいよ、ルイカ」
頬にそっと手を添えて眺めるように薫さんの目を覗き込んだ。その灰色の瞳の中にぼんやりと私が映っている。きっと真っ赤になって呆けた顔をしているのだろう。
でもそんな私を愛おしいと言ってくれる薫さんを思うと泣きたくなるほどに幸せで、早く薫さんのものになってしまいたいと心から願った。
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