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「だっておまえ、薫と付き合い始めたんだろう? 蒼さんのおかげで」
「え? 蒼さんのおかげでって?!」
「違うのか? 涙花のことを心配して蒼さんが一芝居打ったってメールあったんだけど。ハッキリしない薫に喝を入れてやるとか何とか……それで涙花を一時的に薫から隠したんだって」
「……」
(何、それ! 蒼さん、いっちゃんにはメールしていたって訳?!)
少し混乱する頭を抱えているといっちゃんが真顔になった。
「涙花は薫の事情を全部きいたんだろう?」
「!」
「薫のちょっと普通でない境遇、置かれている現状。そういうの全部知って受け入れたんだよな?」
「いっちゃんは知っていたの? 薫さんのことを」
「流石に俺も蒼さんもあのつかず離れずの監視の存在には気が付くよ。これ見よがしなところがあったりしたから。それで薫からその訳を訊いた。そりゃちょっと胸糞悪い話だと思ったけど俺たち以上に薫がそのことに対して諦めているところがあったから俺も蒼さんも何も言えなかった。ただあるがまま受け入れていたってだけで」
「……」
「薫はああいう奴だからさ、絶対的な味方って存在が必要だと思う。そういうのに俺や蒼さんがなれたらいいなと思って常に正直に真正面から薫には接していたんだ」
「……」
(あぁ……そうか)
だからいっちゃんも蒼さんも薫さんに対しては特別視していなくて、ありのままで接していたからあんな暴言や喧嘩腰の会話をしていた。
薫さんの本来の立場とか存在に惑わされることなくよき友人のひとりとして……。
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