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(あっ、だから行き交う人みんなが見ていたってこと?!)
私は慌てて立ち上がった。
「あの、つい田舎だと地べたに座っちゃうの当たり前のことで……その、汚いとか全然思わなくて」
「……」
「でも、そっか……座っちゃいけないんだ……。ははっ、私、常識ないなぁ」
「……おのぼりさんじゃ仕方がないよね」
「……」
つい先刻まで笑っていた人とはまるで別人みたいな変わりように内心驚いていた。
(田舎者は常識ないって思われちゃったかな……)
なんだか少し心が暗くなってしまった。──その時
ぐぅぅぅぅ~~~~っ
「?!」
「……何、今の音」
「あっ、あああああのっ、わ、私のお腹が~~~」
「……」
(ひぃぃぃ──! よりにもよってこんな時にお腹が鳴るなんて!!)
あまりにも恥ずかし過ぎて真っ赤になりながらもつい男の人をジッと見つめてしまった。すると──
「ブハッ!」
「……へ」
「あっはっはははははっ! な、何、今の、漫画みたいな腹の鳴り方っ」
「……」
また最初の時のように破顔して笑い出した男の人をただただジッと見つめる。
(……この人、ひょっとして笑い上戸、なのかな?)
ヒーヒーいいながら笑っている男の人を私はまた見つめることしか出来なかった。
そして見つめながら思う。
(結局この人、誰なんだろう?)
私の名前を知っていたということは何らかの形で私を知っている人なのだろう。
だけど先刻から一向に詳しい事が訊けないでいることに戸惑ってしまう。
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