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「どうかな。ちょっと前向きに考えてみない?」
「えっと……私としてはそのお話、凄く嬉しいです」
「本当?」
「本当です。私も薫さんといつでも一緒にいたいし薫さんのお仕事、凄くやり甲斐があって、もっとやってみたいなって思います」
「じゃあ──」
「でも」
「でも……何?」
私は逸る気持ちを一旦落ち着けて浅く息を吐いた。
「このお話って私と薫さんだけで決めてはいけないんじゃないですか?」
「……」
「私も薫さんも今はパーツモデルの会社の社員として雇われている身であって、特に私は家政婦としての仕事が始まったばかりで……そんな短期間で仕事の全てを放り出して此処から出て行くというのは非常識なんじゃないかと思うんです」
「……ルイカって真面目だね」
「え」
「目先の楽しさに飛び掛からずに全体のことを見回してちゃんとどう処理するのがいいのか考えている常識人ってこと。嫌味じゃないよ? 僕にはない能力だからすごく尊敬する」
「薫さん……」
「でも……そうだね、ルイカのいう通りかも。とりあえず蒼さんと樹に話して納得してもらわないと決められないってことだね」
「はい。私の気持ちは決まっていますから」
「……ルイカ」
お互いを見つめ合い、吸い込まれる様に唇を重ねた。重ねた瞬間から深くなるキスを受けながら着ていた服がまた肌蹴させられた。
「あっ、薫さん……もう」
「ルイカが火を点けたんだよ」
「!」
「ルイカが僕の欲しい言葉をいったり僕のしたい行動を取ってくれるから止まらないよ」
「~~~」
私と薫さんはどこか似ているところがあるのかも知れない。
お互いの境遇は全く違うものだったけれど心が寂しいとか、常に心許せる人が傍にいてくれたらいいのにと思う気持ちとか……そういった心が似通っている気がすると、薫さんからの甘くて優しい愛撫を受け入れながら思ったのだった。
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