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そして私たちが思っていたよりも話は驚くほどにトントン拍子で進んだ。
「そうか……そういったことなら俺は応援するよ」
まずは社長であるいっちゃんに薫さんは本業に力を入れたいと話し、私は薫さんの仕事を手伝いたいと伝えた。
するといっちゃんは少し驚いた顔をしながらも反対はしなかった。
「正直涙花が此処からいなくなるのは寂しいけど、薫が自分から起業したいという気持ちは尊重したい。それに元々パールモデルの方はバイトみたいなものだったしな。本業に力を入れるのは当然だよな」
「……うん」
「今まで以上に頑張りたいって思えたんだもんな、涙花のお蔭で」
「そう。僕の人生はルイカのおかげで動き出したんだよ」
「薫さん……」
薫さんのその言葉にはきっと沢山の意味が込められている。
異国で生まれて周りから未来を決められていた数年が、ある日突然なかったことになってしまって、そして自由に感情を出すのを遠巻きに禁じられていた今までのことを思うと胸が苦しくなってしまう。
「僕はルイカがいればどんなに劣悪な状況に身を置いても幸せだと思えるよ」
そう呟きながら腰を抱かれ頬にチュッとキスされた。
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