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「蒼さん、独立には反対ってどういう意味でいってるの」
薫さんにしては珍しくその表情に分かり易い感情を貼りつけて蒼さんに詰め寄った。
「そのまんまの意味だ。独立どころか此処から出て行くことも反対する」
「どうして」
「煩せぇな! とにかく反対だ! いいな、これで話は終わりだ」
声を荒げながらソファから立ち上がり部屋の方へ歩いて行く。そんな蒼さんの腕を私は咄嗟に掴んだ。
「待ってください!」
「!」
その一瞬、ほんの少しだけ蒼さんの頬が赤く染まったけれどすぐに不機嫌な顔を浮かべて私の手を払った。
「蒼さん、どうして反対なんですか?」
「……」
「ちゃんとした理由を言ってくれないと薫さんだって私だって納得が出来ません」
「……」
「勿論、私たちが言っていることは社会人としては非常識なことかも知れません。でも蒼さんなら解ってくれると思っていました」
「……」
「蒼さんもいっちゃんと同じ気持ちでいてくれるんだと……薫さんに対してはそうなんだって」
「──ルイカのことがあるから?」
「!」
私の言葉を遮って聞こえた薫さんの言葉に驚いた。
「蒼さん、まだルイカを想っていて此処から出て行くこと、僕とふたりで住むことに反対しているんでしょう」
「……」
(え……そうなの?)
薫さんが蒼さんに向かって放った言葉は理由としては考えられることかも知れないけれど……
(でももう蒼さんは私のことなんて)
心の中でそんな事を考えていると蒼さんが私たちに向き合って口を開いた。
「あぁ、そうだ。こいつが此処からいなくなるのが反対理由だ」
「!」
蒼さんの発言で一気に場の雰囲気が剣呑なものになってしまった。
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