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私が原因で薫さんの独立が認められないだなんて──
(どうしよう!)
不安な気持ちがドンドン心の中に充満して来た。息苦しい中でもどうしたら蒼さんを説得出来るかと必死に考えていると予想外の発言が飛び出した。
「いいか、こいつはオレの飯炊き当番だ。こいつがいなくなったらオレが餓死するだろうが!」
「……え」
「へ?」
薫さんが驚いた声を小さく発して続いて私が大きく素っ頓狂な声を発した。
「やっとまともな飯炊き女が来たと思ったのにこんな短期間でいなくなるなんてありえないだろう! あぁ、反対だ、オレの生死に関わる事態は何が何でも回避しないといけねぇだろうが!」
「あの、蒼さん。たったそれだけのことで私と薫さんを此処に縛ろうっていうんですか?!」
「馬鹿野郎! たったそれだけじゃねぇよ! 言っただろう、オレの生死に関わるって。また初めから得体の知れない家政婦を雇って気を使わねぇといけなくなるだろうが!」
「……」
(……確かに)
私が来るまでの状況をかいつまんでも、確かに私がいなくなることで少なくとも食事や食事以外の家事全般は滞ることになるのかも知れない。
(そんな……どうしよう)
仮に新しい家政婦さんが来たとしても様々な理由から早々に解雇する羽目になるのだと分かっていると中々新しいことに乗り替わるのは辛いと思う。
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