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それから私と薫さんがマンションから出て行く日はあっという間に来た。──と、いっても……
「まさか……此処に引っ越すことになるなんて」
「……まぁ、僕は大体想像がついていたよ」
新しい住居を蒼さんが探してくれるという話をそのまま鵜呑みにして任せていたらとんでもないことになった。
「どうだ、満足だろう」
「あ、蒼さん」
「いやぁー、蒼さんもいい仕事するなぁ。まさか下の階に空き部屋があっただなんて」
「いっちゃん」
そう、蒼さんが用意してくれた私たちの新居は今まで住んでいたマンションの部屋の真下だったのだ。
(でも確か下の階って入居者がいたような……?)
「ルイカ、何も考えちゃダメ」
「え」
薫さんにこそっと耳打ちされてドキッとした。
「此処に住んでいた人、もっと広くていい処を紹介されて越して行った」
「へ?」
「僕、引っ越しの挨拶されたから。その後すぐにリフォーム作業していた。……本当、蒼さんって仕事が早いよね」
「……」
(そっか……。うん、蒼さんだもんね)
私みたいな庶民には想像も出来ない工作をサクッとやっちゃうんだろうなと、そう思うことにした。
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