第一章 涙花の旅立ち

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初恋を諦めてから恋とは無縁な日々を過ごすことになった。 中学の時は友だちとそれなりに面白可笑しく過ごした。 高校生になってからは友だちは大抵彼氏が出来て私と遊ぶよりも彼氏を優先させることが多くなった。 とはいえ私も何度か告白をされたことがあったけれど、どうしてもお付き合いという行為には躊躇いがあり、結局彼氏無しの青春を送る羽目になった。 「ねぇ、涙花は高校卒業したらどうするの?」 「卒業……かぁ」 そしてあっという間に将来の夢を明確にしてそれに合った進路を目指さなくてはいけない時期になっていた。 「あたしは隣県にある専門学校に行くの。調理師免許取って実家の料理屋継がなきゃだからさぁ」 「そっか」 友だちの何人かはもうちゃんと将来の事を考えて進路を決めていた。だけど私は特別なりたい職業も夢もないまま無為な毎日を過ごしていた。 (いや、夢はあったんだけどなぁ) 小さな頃から抱き続けていた唯一の夢──それはいっちゃんのお嫁さんになることだった。 だけどその夢はもう叶うことがないのだと思い知った時から私の気持ちは宙ぶらりんになっていた。 進路に関しては田舎のこの町では選択肢は主に二つしかない。 大学に進学したいのなら大学のある街まで行かなければいけない。一番近い大学でも電車で1~2時間かかる距離にあることから進学する子はほぼ全員町を出て行く。 就職に至っては田舎のこの町ではある程度の求人数しかないからコネや成績優秀者が優遇される。家が自営業なら其処を継ぐのが当たり前になっている。 いずれにしろ町で就職先が見つからなかったらやっぱり町を出て行くしかなかった。
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