第一章 涙花の旅立ち

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(大学は別に行きたくないんだよね) 勉強嫌いの私にとってその選択肢は早々になくなった。そうなると就職ということになるのだが、成績優秀者でもコネがある訳でもない私はどうしたらいいのだろうか。 将来の事を考えると本当に憂鬱になる。このまま町に留まっていても先は知れているような気がする。 (この先いっちゃん以上に好きになれる人なんて現れるのだろうか?) だけどいつまでも独身でいればきっと周りからお見合い話なんかを持ち出されて適当に妥協して結婚してしまう未来が待っている様な気がしてならない。 (それは……嫌だなぁ) でもだからといって住み慣れた町を出てひとり知らない土地で働くということにも抵抗があった。 (はぁ……本当、どうしよう……) 先行き不安な気持ちを抱きつつ帰路をトボトボ歩いていると「るいちゃーん」と声を掛けられハッと我に返った。 声がした方へ視線を向けると其処にはよく知った顔があった。 「るいちゃん!」 「幹くん、どうしたの慌てて」 凄い血相で私の元に駆け寄って来た(みき)くんはいっちゃんの10歳下の弟だ。 現在中学1年生の幹くんとはいっちゃんがいた頃から仲が良くて、いっちゃんがいなくなった今でも私は幹くんを弟のように可愛がっていた。 「大変だよ! 兄ちゃんから電話あったの!」 「──え」 それはある日突然、私に降って湧いた驚きの報告だった。
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