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『あ、涙花? 涙花なのか』
「う、うん、私だよ。先刻おばさんからこの番号教えてもらって」
『そっか、早速かけてくれたんだな。ありがとう』
「……いっちゃん」
実に5年ぶりの会話。最後に話した時と変わらない優しげな物言いと涼しげな声に胸の奥底に押し込めていた恋心が一気に浮上して来た。
『えっ、どうした、涙花』
「うっ……ううん……なん、なんでもな、いっ」
込み上げて来る感情が涙になって溢れて来る。それを悟られないように必死に我慢するのだけれどいっちゃんには速攻バレた。
『泣いてんのか?』
「っ」
『ごめんな、ずっと連絡しなくて』
「……」
『本当に、ごめん』
「~~~いっちゃぁん」
堪え切れずに電話口だというのにわんわん泣き出してしまった。
ちゃんといっちゃんと話そうと思っても止むことのない嗚咽は私から言葉を奪ってしまってまともな会話にはならなかった。
そんなむせび泣く私をいっちゃんは電話の向こうからジッと待っててくれた。
やがて荒ぶった気持ちが徐々に落ち着きを取り戻し、いっちゃんにみっともないものを聞かせてごめんねと謝った。
『いいんだ。涙花が泣く気持ち、すごく解るから。──本当にごめんな』
「うん……もう大丈夫だよ」
そこからいっちゃんは少しずつ今まで連絡出来なかった理由や私にお願いしたい事などを簡単に話してくれた。
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