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〜知恩院前〜
やっと辿り着いた3人。
人集りを、必死で抑える警官達。
「あっ!」
踏み出した途端、つまずく真理。
「気をつけてください」
その手を握って離さない鶴城。
「34回…か」
ボソリと呟く麗夜。
「何がですか? レーヤ」
「ん? マリがつまずいた回数よ」
途中からは転ばない様にと、鶴城に手を繋がせた。
片想いの恋に赤面していた真理。
「他心眼ですか…なるほど見事ですね」
「わざとじゃないからね、レーヤ!」
「分かってるわよ。それだけ行かせたくないモノが、ここに居るってことだ」
そう言って、人混みの中へとスルリと入って行く。
慌てて後を追う2人。
(掻き分ける腕はないはずなのに…)
レーヤの速さを不思議に思うツルギ。
何とか前に出た。
急に目の前に現れた、腕のないゴスロリ。
色んな意味で驚く警官💦
後から来たマリが、学生証を突きつける。
「私は日下部真理。ここの住職、日下部法成は私の父です。大切なものを頼まれて来ました。入れてください」
「えっ?…ご住職の? しかし…」
「浄土門主の使いを、ましてやその娘の総本山入りを、あなたは拒むと言うのですか?」
鶴城が追撃を放つ。
「お前、部署はどこだ?」
鋭い目で、レーヤが尋ねた。
「き、君たち…今は火災の現場検証中だ。入れるわけには…」
「彼の兄は神崎昴。警視庁凶悪犯罪対策本部の刑事だが…いいのか?」
対策本部の活躍は、よく耳にしている。
未だ縦の階級文化が色濃く残る警察組織。
心の動揺が見て取れた。
「因みに…その刑事の父は、もう一つの現場、智積院住職の神崎貞生だ。それから…私の父は、亡き天台座主の華僑林天膳。それでも止めるか?」
敢えて鶴城の父とは言わず、自分が天台座主を継いだとも言わないレーヤ。
彼にそれを考えさせることで、止めるべきかの判断を鈍らせる思惑。
その決心が揺らいだ時。
「パン💥、パンパン💥」
複数の銃声が、中から聞こえた。
「行くよ❗️」
躊躇する事なくレーヤが走り、2人も続く。
不意をつかれた彼。
「おいこら!」
声には出したが、既に止める気は失せていた。
それより無線で、中の様子を確認する。
境内に入った途端。
「うっ…これは」
3人の足が止まる。
悲鳴と銃声、そして悍ましい唸り声。
「式術『眼心網囲』!」
仁王立ちしたレーヤの足元。
その影から、見えない無数の線が地を走る。
「マリ、視えたわね!ここは任せる」
レーヤの言う通り、マリにはその網が視えた。
そしてその中に居る人と…屍人も。
「マリ、どうした?」
鶴城の声は聞こえてはいない。
何かが…身体の中から膨らんで来る感覚。
無意識に胸の前で掌を合わせる真理。
「防術『命守法輪波』散開!」
言葉と同時に片膝を立ててしゃがみ、その網に両掌を左右の地に着けた。
「ブァッ!✨」
無数の線を閃光が走る。
その光は、本堂の焼け跡にも届いた。
銃弾は尽き、囲まれていた倉沢と小暮。
素手で殴った小暮の拳は腐り始め、触れてはいけないことを悟った。
正に万事休すと諦めかけた時。
現れた光の輪が2人と屍人を隔てた。
輪に触れた屍人達が、瞬時に灰と化す。
それにより、死の歩みが止まった。
「何か知らねぇが、マジ助かったぜ」
「小暮、手は大丈夫か?」
ふと、痛みが消え、腐敗の侵食も止まっていることに気付いた。
「大丈夫だが…一体どうなっちまったんだ?」
周りから聞こえていた悲鳴や銃声も止んだ。
そして、屍人達が急に向きを変え、走り出す。
脆そうな焼け焦げた体。
それが決して弱くないことは、戦って分かった。
しかし…
「何て速さだ…生きてる者を、遥かに上回ってやがる。とにかく今の内に逃げよう」
「待て小暮❗️」
「えっ…」
「ヴァシャ!!」
振り向く間もなかった。
光輪から踏み出した脚を、風が薙いだ。
踏み込む一歩を失った体が、前に倒れる。
「ぐぉぉおー❗️」
そこへ向かってくる何か。
それを睨みつけて吠えたのは、彼の刑事としての意地と、タフな資質が成すものであった。
「ヅバッ💥」
抵抗にさえ微塵も足りず。
一瞬にして、飛散する肉片。
(罠か…クソッ!)
その凄まじい邪気に、光が明るさを失って行く。
20mは先、と思った時には直ぐ近くに…居た。
死を覚悟した倉沢。
しかし今の彼には、その恐怖以上に、目の前で仲間を殺られた怒りの方が優っていた🔥。
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