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一瞬の静けさ。
鶴城がそっと肩に触れ、我に返る真理。
「あれ? 私…どうして?」
(マリ、無意識に助けるのが他心眼よ。思ってた以上に、君は強いね)
頭の中で、レーヤの声がした。
(ふ〜ん…)
立ち上がり、地に着いていた掌を払う。
ふと…その視界に、異様なモノが見えた。
「マリ、逃げるんだ!」
鶴城もそれに気付いた。
彼の頭の中にも、レーヤの声が囁く。
(マリは大丈夫。それよりツルギ、本堂跡へ急いで! 丑の方角よ。何かが居る)
(了解!)
真正な仲間の契りを結び、その頭脳と心で言葉を交わす術式『心波』。
怯え慄く真理を残し、駆け出す鶴城。
レーヤの言葉に疑いはない。
「ちょっと待っ…早っ💦」
走るのは苦手な真理。
直ぐそこまで迫った屍人の群れ。
(警官達まで…どうして?)
(奴らには『屍人使い』術がかけられ、殺された人間も取り込まれている様ね)
(マジっ! ゾンビのパクリやないの!)
何て言ってる場合では無い。
(マリ、京都訛りが出てるよ)
走りながらツッコむ鶴城。
『片想い』に指摘され、赤面する真理。
(照れてる余裕があるとはさすがね。私は奴らがここを出ないように止めるから、マリはそれまで防いでて。ツルギ、ソイツは多分『鎌鼬』。速さなら君の方が上よ!)
心波は、心情まで伝わる。
「防いでって言われても💦」
呟くも、逃げるも遅し。
(マリ、後ろを見て!)
(えっ?)
振り向くマリ。
中の異常に気付き、入って来る警官達。
その後から、なだれ込むマスコミ陣。
「ダメ❗️」
「グゥオォ!」
その背中へ飛び掛かる、屍人の群れ。
「パシーン✨!」
空間を切り裂く衝波。
真理の背後で塵と化す屍人。
片膝をつき、頭の後ろで手を合わせた真理。
そこから広がる見えない壁。
(滅法『裏・防掌波』か。さすがだな)
「えっ?」
レーヤの声で、正気に戻る真理。
前方には、驚いて立ち止まった警官やマスコミ。
その視線の先へ振り向く。
「うわぁ❗️💦」
微かに煌めく壁✨が、彼女には見えた。
それに阻まれ、唸り声を上げる屍人達。
「これ…私が?」
(そうだよ、君が皆んなを守るためにね)
(そんな術、私は知らないのに…)
(君は風神。そしてここは、君が生まれ育った場所だ。それが、持って生まれた君の力を覚醒させた。ここは君の縄張り。マリは最強だよ)
「私の…テリトリー」
レーヤに言われて気付いた。
近付いてくる屍人に、何故か怖さを感じず。
平静さの中に、自信さえあったこと。
(皆んなを近付けないように!)
それを告げたレーヤ。
唯一残った三門へと、足を踏み入れた。
(酷いな…やはりここか)
設置されたはずの警察の現場本部。
10人程…と思われる遺体が、散らばっていた。
一方。
その声を聞きながら、ツルギの目は、得体の知れないモノと対峙していた。
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