【死】裏観月

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京都駅を発車した、東京行き新幹線。 静かなグリーン車内で、暫し会話のない三人。 真理は、焼き殺された上に、その体を殺人の道具に使われた僧侶達を想い、黙祷を捧げている。 知った者も、中にはいたはず。 その悲しみと、屍人使いへの怒りに胸が震えた。 一方鶴城は、父親を殺された実感が持てず、それでも現実に向き合って、自分の使命を考えていた。 動き出して直ぐに、レーヤの携帯が鳴った。 不知火(しらぬい) 瑠奈(るな)からである。 「京都を出たとこ。2人も一緒。何かあった?」 「さっき京都府警の村上って刑事から連絡があって、高野山が襲撃されて全焼したそうよ」 「高野が全焼?」 その声にレーヤを見る真理と鶴城。 「炎魔の話じゃ、知恩院と智積院は高野山天台宗の真姫羅だと…何故だ?」 「分かんないわよ…って言うか、どうして倒したはずの炎魔が出てくるわけ? ややこしいわね」 IQ230と言われるレーヤの頭脳が働く。 残った理由はただ1つ…だが。 「それからね、高野山の密偵によると、火事で亡くなったのは、高野山の幹部連中全員。それから、正体がハッキリしないけど、その真姫羅も境内で死んでたそうよ。かなり…凄惨な形で」 見つかった真姫羅の遺体は、四肢がもぎ取られ、その肉と内臓を、何かに喰われていた。 「真姫羅が死んだ?」 久我山宗守の側近であり、凄腕の術師。 そして暗殺者という噂は、レーヤも聞いていた。 「ルナ、関空のハイジャック事件で、消えた救急車については、何か言ってなかった?」 「聞くまでもなく、ニュースで今流れてるわよ。救急車は、和歌山県九度山町で事故を起こし、救急隊員は全員死亡。搬送していた怪我人が行方不明で、どうやらタクシーで移動しているみたい」 「九度山町は、高野山の入り口。真姫羅を殺ったのは、ソイツかもね。父天膳の遺言にあった『敵は別にあり』ってヤツか…羽田も派手にやったみたいだが、東京は大丈夫か?」 「鋭いわね、西山(せいざん)浄土宗総本山 光明寺の東京別院が襲撃されて、全滅よ。こちらは火災はなしだけど、酷い惨状らしいわ」 「光明寺って、各務(かがみ)ご住職がいるところ…」 耳を寄せて聞いている2人。 呟いた真理は鎮西(ちんぜい)浄土宗で、別宗派となるが、浄土門主ぐらいは知っていた。 「マリ、手短かに言うわ。知恩院と智積院、そして高野山の火災は、久我山宗守の指示で真姫羅がやったことで間違いなし」 「レーヤ、どうして自分の総本山を久我山が?」 当然の問いである。 それには、真理も鶴城も驚いた。 「その答えに、今そっちは困ってんじゃない?」 「まさか⁉️」 レーヤの読みに、モニターの映像を見る瑠奈。 新宿区にある、宗教法人天台宗務庁東京支部。 その玄関前に、大勢のマスコミが詰めかけていた。
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