【壱】古都炎上

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〜中央区台場〜 警視庁凶悪犯罪対策本部。 部長の富士本を1番に、メンバーが出勤して来る。 「おっはよ。あらら、昴また帰らなかったのね」 課長の鳳来(ほうらい) (さき)が、顔半分がキーボードになった昴に呆れる。 「寝落ちするなら、後ろにしろよ。ヨダレでキーボードが壊れるぜ」 経験者の宮本淳一。 「大丈夫、ゴム製のカバー付きなんで」 「そう言う問題じゃないわよ…全く」 夫の口癖が移った宮本紗夜。 「そうよ、みんな体を心配しているんだから」 「あ、桐谷さんおはようございます。貰ったリストの連中ですが、調べれば調べるほど、怪しさ満載です」 「職質でもしてみますか?」 「こらこら真田さん。花山総監から、関わらない様に釘を刺されたのを忘れるな」 「でも部長、見てくださいよこれ」 課内に新しく設けたモニターに、写真や経歴らしきものを映した。 「各宗派の(おさ)と親族はさて置き、あの真姫羅って奴や、翡翠、星陰、月陰、炎魔に神御魂。そもそも本名じゃないですよね? 何の検索にも引っ掛からないし。宗派内は未だにITとは無縁の様で、全く覗けないからお手上げです」 「それに、戸籍上は一応登録されている、祇園火輪に那智蓮華、七山佐介、新月結女、華柳知念達も、その先が辿れません。怪しいものです」 真田も昴と手分けして調査していた。 「まるで時代劇の面子(めんつ)ね。実際に妖しい術で、不審死も出てるし。豊川さんが、検死報告に苦労してたわ」 普通ならば、術師など信じはしない咲。 しかし、刑事課(ここ)には紗夜がいる。 紗夜が認めたなら、信じるしかない。 それは、他の皆も同じであった。 「まだ…1人居ます」 その紗夜が、ボソリと呟いた。 ドキッ!っとして、紗夜を見るメンバー。 「呪鬼…です。辻桐宗馬さんから、その名を聞いた瞬間。この掌が反応して激痛が…」 右の掌を見つめる紗夜。 そこに棲むモノ。 それは…邪悪ではあるが紗夜を護り、幾つかの事件にも力を貸して来た。 静まり返った課内に、昴が気を利かす。 「それから! あることに気付いたんです」 緊張感が解け、昴が映したモニターを見る皆んな。 そこに映った4人。 「華僑林天膳が…で亡くなった後、天台宗の座主を継いだ、娘の華僑林麗夜。それに、浄土宗門主の日下部法成の娘、日下部真理。浄土真宗本願寺派門主の枚方朔也の息子、枚方陽平。それから…」 言い難そうに(ども)る昴。 「真言宗智山派座主の神崎貞雄の息子、神崎鶴城。昴さんの弟ね」 「マジか⁉️」 桐谷の紹介に、驚く淳一。 元CIA諜報員の桐谷美月は、ここへ入るに当たり、仲間の素性(すじょう)を調べ上げていた。 「さすがは桐谷さん、一種の職業病ですね」 「そう言う真田さんもでしょ?」 「淳、知らなかったの?」 紗夜は昴の心を時に、気付いていた。 「部長は…履歴書を見てるか。昴、お前…坊主の息子だったのか。参ったぜ全く…」 「淳さん、驚くのはそこじゃなくて、この4人は同じ年の同じ日に生まれ、同時に母親は…亡くなっています」 「そんな、じゃあ…」 言いかけて、やめる咲。 昴にとっては、辛い想い出である。 「大丈夫ですから、お気遣いなく。母はその時に死にました。でもそれは良くあること。あり得ないのは4人の偶然と、その4人が今、同じ大学に通っていると言うことです❗️」 大学での写真が映される。 麗夜だけは、別の場所で。 「た、確かに…偶然にしては出来過ぎてるわね」 「作為的なもの…いや、それ以上の神がかり的なものを感じますね、咲さん」 真田の超感覚的思考が、明らかに秘密の匂いを感じ取っていた。
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