ツンデレ美形ショタはお呼びじゃありません①

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ツンデレ美形ショタはお呼びじゃありません①

営業の外回り中、車の事故に巻きこまれ死んだはずの俺は、また会社のデスクに座っていた。 どうやら、熱心にプレイしていたBLゲーム「男だらけの会社で社内恋愛は禁止です!」に転生したらしい。 とはいえ、あらたな人生を歩むことになったのは、主人公でなければ、攻略する主要キャラでもなく、顔が描かれていないモブCとして。 一応、主人公の同期で親しい友人の一人なのだが・・・。 俺が転生してからも、名前がもらえず「モブC」と呼ばれる始末。 なんて、空気のような雑魚キャラになったのを嘆いてはいない。 BLの世界では壁や観葉植物になりたいと願う腐男子にとって、主要キャラから距離をおき、じっくりリーマンの秘密の恋愛模様を観察できるのは本望。 おまけに、ゲームと同じく、俺には心の声が聞こえるし。 たとえば、主人公の新入社員テッペイと、指導係の先輩がこんな、やりとりをしていた場合。 「おい、テッペイ、だいじょうぶが? なんだか、ふらついているし、顔が赤いし、目がうつろだし」 「あ、いや、昨日、ちょっと、筋トレしすぎて・・・」 当たりさわりのない先輩後輩の会話のようで、心の声はというと。 「今日は忙しいって分かってたのに、テッペイがあまりにエッチで、抑えがきかなかったな・・・。 ああ、今も、目を潤ませて、熱っぽい視線をむけやがって・・・仕事中だが、ちょっと、お触りだけでも・・・」 「先輩のバカっ。自分のせいって分かってて聞いてきやがって。 ぼくにヘタな嘘を吐かせて、ほんと、イジワル。 もお、そんな、エロイ目で体をまさぐるように見られたら、ぼく、ぼく、ガマン、できなく・・・」 「すこし静かなところで休もうか」と先輩がうながし「は、はい、すみません・・・」と部署からでていく二人を「ゴチソウさま、どうか、ごゆっくり」と崇めるように見送る俺。 ちなみに、この「指導係の先輩×新入社員テッペイ」が俺の推しカプ。 ほかにも、目白押しのイケメンがテッペイの争奪戦をしているものの、今のところ、テッペイは先輩一筋。 おかげで、恋愛禁止の社内にあって、二人が心の声でいちゃいちゃするのを、毎日聞けて至福。 たまに人気のない倉庫や会議室から、あんあん漏れるのを耳にすれば、ほかの人にばれないよう助力しつつ、ドアや壁に張りついて、ご相伴にあずかり。 こうして、真面目に仕事をこなしながら、推しカプを見守り隊の活動に勤しんで、充実した日々を送っていたのが、頭痛の種が一つだけ。 主要キャラの一人、ショタツンデレの吉太郎が、ハラスメント的にうっとおしくからんでくること。 吉太郎の名にそぐわない、金髪で青い瞳をした、絵に描いたような美少年。 そのくせ、俺より年上の二十八才のいい大人で、社長の息子。 現実にはありえない、名前からしてギャップのあるショタ風成人にして、典型的な性根の腐ったお坊ちゃま。 が、デレたときのギャップ萌えに心奪られるプレイヤーは多く、主要キャラの一二を争う人気。 ちなみに俺は主要キャラのなかでイチバン、キライだ。 もともと、性格がきつい人はニガテだし、たまにカワイゲを見せたところで「いや、ふだんからヤサシクしろよ」と冷めてしまう。 まあ、前世のパワハラセクハラコンボでフルボッコしてきた上司と、重なるせいもあるが。 まだ、心の声がデレていれば「たく、しかたないな」とすこしは溜飲がさがるものを。 どうしてか、主要キャラのなかで、吉太郎の心の声だけが聞こえないし。 なので、近づかないよう気をつけていたのが、吉太郎のほうから、なにかと難癖やイチャモンをつけて、かまってくる。 「ぼくの外出につきあえ!断ったら、父様にいいつけてクビにしてやるからな!」とパワハラ全開。 「モブC、おまえ、こんなに仕事ができないんじゃあ、こっちでも女の子を満足させられないんじゃないのお?」と股間を撫でまわしてセクハラ全開。 たぶん、テッペイに告白してフラれたか、ほかの男とくっついたのを察してかで、八つ当たりをしているのだろう。 それにしても、どうして、恋敵でもないモブの俺がターゲットになったのやら。 理由は知れず、とくに怒りを買った覚えもなく。 俺からしたら理不尽なシウチだったが、推しカプを拝むシアワセを失いたくなく、吉太郎にやられ放題。 そりゃあ、ストレスを溜めこみながら「でも、テッペイは、おまえを選ばなかったけどな!」とざまあと思い、ツンデレショタながら、大人気ない二十八才のイジメに、耐えつづけて。 ある日の会社での飲み会でのこと。 相かわらず、ツンデレショタにまとわりつかれ、一気飲みを強要されて、ばんきゅー。 目が覚めるとベッドの上、見知らぬ薄暗い天井を見上げていて。 寝ぼけながらも、胸がひんやりとするのに「ん・・・」と見やれば、突起にねちょねちょの透明な液体がかけられ、小さい白い球体が添えられている。 え?ていうか、Yシャツのボタンを外されている? 胸と腹だけでなく、ズボンとパンツを脱がされ、股間や足が丸だしに。 万歳する手は縛られて、びくともしない。 SMプレイ?でも、俺に、そんな趣味はないし、専門の店に頼んだ覚えも・・・。 拘束され、半裸にされるまでの記憶はまったくなく、覚えているのは、飲み会で「いっき!いっき!」と煽られたところまで。 そうして俺を酒でつぶした犯人、吉太郎の顔を浮かべて「まさか・・・!」とサブイボが。 「やあ、この世にいてもいなくても、どーでもいい、無価値な脇役のモブCくん」 初手から、人権侵害発言を噛ますのは、もちろん、憎たらしいツンデレショタだ。 手には小さい箱のようなものを持って、そこから二本の線が伸びている。 線がつながっているのは・・・。 そのいきつく先に気づいて、ぞっとしたところで、スイッチオン! 乳首に添えられ、テープで固定された球体が、ぶぶぶぶぶぶぶと振動。 粘着質な液体を散らして、ちゅぷちゅぷちゅぷちゅぷちゅぷ! 「や、やあ、あふう、うう、ん、吉、たろ、さ、やめ、こ、な、セク、ハラ、越して、犯罪、男、だ、から、は、はあ、はあん、う、くう、きもち、ワル、だけ、からあ・・・!」 なんとか、吉太郎を興ざめさせようと口で抗うも、本音は「ああん!なんて、カ・イ・カ・ンッ!このまま、俺、イッちゃうよおおお(ハートマーク)!」だ。 いや、俺はふだんからチクニーしていないし、前世でエッチしたときも、自分のを触らず、相手にも触らせなかった。 ただ、転生してから、ナオニ―を一回もせず、たまりにたまっていたものだから。 根っからの腐男子なれど、現実では無個性な異性愛者。 BLゲームに転生し、同性愛に興味を持つようになったものの、自分が当事者となるのは、なかなかタメラワレて。 前世では、がんがんオカズにしていたのが、BL世界にいては、どうにも、ちんこがしおしお。 で、いざ、ムリヤリ当事者にさせられたなら、乳首を触られただけで、元気満点に即勃起、だらだらお漏らし。 よほど、ためこんでいたからか、もともと、素質があったのか。 なににしろ、美少年に冷ややかに見おろされながら、大人のおもちゃでイタズラされて「やだあ、こんなキモチーの、生まれてはじめてえ!」と恥ずかしげもなく、体が大ヨロココビ。 あっという間に追いつめられ「や、やあ、やあん、や、やめ、てえ!ああ、だめえ、吉太郎・・・!」とつい呼び捨てにし、イキそうになったところ。 「ぶふっ」と噴きだし、非情にも、スイッチオフにしやがって。 「ふはは、こんな快感を覚えたのは、生まれてはじめてだって? アダルトビデオの台詞のような言葉、ほんとうに、ほざくヤツいるんだね。 ぼくを犯罪者かのように、口では責めてたてながら、心のなかでは、引くほどデレまくりで、ほんと、笑える」 寸止めを食らって、鼓動と呼吸を乱しつつ、その言葉にびっくり仰天。 俺は吉太郎の心の声が聞こえないというに、吉太郎には俺の心の声がつつぬけなのか!? 心の叫びに応じるように「そーだよ」とにんまりしたのに、あらためて絶句したもので。
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