新・7月31日

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「……それって鬼だよね?」 「うん。鬼」 「タカシくんは泳げる?」 「泳げない」  おばあちゃんは、村の子たちはみんな泳ぎが得意だと言っていたけど、タカシは違うらしい。 「タカシくんは村の子なんだよね?」 「そうだよ」 「いつも誰と遊んでるの?」  そう聞くとタカシはすっと立ち上がり、右手人差し指をまっすぐぼくに向けた。 「え?」 「ユウヤ。ユウヤと遊んでる」 「そ、それは今の話でしょう? そうじゃなくて……」  なぜだか、ぞくりと寒気がした。  きっとぼくは聞いてはいけないことを聞いてしまったのだ。タカシには友達がいないのだろう。もしかしたらいじめにあっているのかもしれない。だから、遊んでくれるのはぼくしかいないという意味で指をさしたんだ。きっとそう。 「ぼく、帰るね。また明日も来るよ」  タカシにそう告げて、ぼくは慌ててまわれ右をする。  振り向くな。  どうしてだか強くそう思う。
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