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「……それって鬼だよね?」
「うん。鬼」
「タカシくんは泳げる?」
「泳げない」
おばあちゃんは、村の子たちはみんな泳ぎが得意だと言っていたけど、タカシは違うらしい。
「タカシくんは村の子なんだよね?」
「そうだよ」
「いつも誰と遊んでるの?」
そう聞くとタカシはすっと立ち上がり、右手人差し指をまっすぐぼくに向けた。
「え?」
「ユウヤ。ユウヤと遊んでる」
「そ、それは今の話でしょう? そうじゃなくて……」
なぜだか、ぞくりと寒気がした。
きっとぼくは聞いてはいけないことを聞いてしまったのだ。タカシには友達がいないのだろう。もしかしたらいじめにあっているのかもしれない。だから、遊んでくれるのはぼくしかいないという意味で指をさしたんだ。きっとそう。
「ぼく、帰るね。また明日も来るよ」
タカシにそう告げて、ぼくは慌ててまわれ右をする。
振り向くな。
どうしてだか強くそう思う。
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