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新・8月29日
長かった二回目の夏休みも、もうすぐ終わる。
ぼくは、おばあちゃんが今日のために縫ってくれたジンベエを着て、村の神社へとやってきた。
どこからともなく聞こえてくる太鼓の音。
ドンドンドンという力強い音に、ぼくの心臓も高鳴る。
「ユウヤ、これで好きなものを買っておいで。おばあちゃんは、ちょっと用事があるからの」
おばあちゃんがぼくに渡してくれたのは五千円札だった。
「えっ、こんなにいらないよ」
「遠慮するな。せっかくの夏祭りだ。それに、もう夏休みも終わるじゃろ。なんもしてやれんかったから、お金くらいもらっておけ」
ほほほと笑いながら、おばあちゃんがぼくのほっぺたを撫でる。なんだか泣きそうになって「ありがとう」と言うのが精一杯だった。
ひとりは少しつまらないなと思ったけれど、見たこともないくらい大勢の人が賑わう祭りの中では、それもだんだんと気にならなくなっていた。なにを買おうかとキョロキョロしていると、お面を売っている店があって、ぼくは思わず足をとめた。
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