新・8月29日

2/3
前へ
/22ページ
次へ
 祭りでお面を買ったのは何年生の時だろうか。二年生か三年生くらいが最後だったように思う。アニメのキャラクターの顔がずらりと並んでいる。 「ユウヤくん」  不意に声をかけられ振り向くと、そこにはタカシが立っていた。相も変わらず手作りの鬼の面をつけて、あの日と同じ服を着ている。 「また明日って言ったのに来なかったね」  タカシがぼくを責めるように言う。 「あ……ああ、ごめんね。おばあちゃんの手伝いが忙しくて」 「夏休み、もう終わりでしょ? 明日か明後日には帰っちゃうの?」 「うん、そうだね。たぶん、帰るよ」  そう答えながら、ぼくは不安に押し潰されそうになっていた。気にしないようにはしていたけれど、ぼくの夏休みはなのだ。本当に夏休みが終わったら東京の実家に戻れるのかどうか。今のところ確信はない。 「お面、買うの?」 「え……どうかな。見てただけだから」 「いいな。新しいお面、ほしいな」
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加