旧・8月31日

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「あーあ……」  そりゃあ、父さんも母さんも働いているから旅行になんて行けないってことは百も承知だ。平凡な海水浴だって、父さんがわざわざ有給を使ってまで連れていってくれたのだとわかっている。海の家で食べた焼きそばもかき氷も美味しかったし、スイカ割りもまあまあ楽しかった。  それだって立派な夏休みの思い出だってわかってる。  でも、クラスメイトの花山くんは毎年海外旅行へ行っているし、三園(みその)さんはキャンプへ行くと言っていたし、堀江はおばあちゃんの家に泊まりに行って夏祭りに参加するのだと言っていた。 「……そうだ!」  ぼくも夏休みの間は、おばあちゃんのところへ行っていたことにすれば良い。確か父さんの実家はT県の田舎にあって、田んぼと山しかない退屈な場所だと聞いている。ずっとそこにいたことにすれば、ぼくの日記がつまらないものでも仕方がないというもの。
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