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「引き継ぎのことも含めて詳しい話をする為に顔合わせをすることになって、私の後任が挨拶に来てくれるから、皐月くんに出迎えを頼みたいんだ。良いかい?」
課長に吊られ、こちらの対応もゆったりにこやかになる。
「あ、そうなんですかぁ。わかりました。じゃあ受付から連絡入ったら行ってきますね。応接室にお通しすればいいですか?」
「うん、お願いね」
そういえばと、去り際の課長に咄嗟に尋ねる。
「あの、そういえば後任の方の名前とか聞いてなかったんですけど」
すると、課長はほんわかした雰囲気で振り返った。
「あー、それは会ってからのお楽しみにって」
「え?」
「後任者の希望でね。まぁ、お楽しみに」
そう言い残し、課長はゆったりと自分のデスクに戻っていった。
疑問は残るが、課長がイキイキしているからまぁ良いかと、深くは考えなかった。
職場でガッチリした男を見るのも良かったけど、課長もある意味癒しの存在だった。
もうあの姿が見られなくなると思うと、少し寂しい。小さな背中を眺めて、気持ちもしんみり
していく。
けど、新しく入ってくる課長への不安も出てきた。
(会うまで名前言わないって、お茶目なタイプなのか? それともめんどくさい感じ? 性格合う合わないも気になるけど、どうせなら見て癒される人が良いなぁ。一緒に居る時間長いの俺だし。……紫崎に怒られるかな)
すると、内線で受付から連絡が入ったと部下から聞き、俺は一階の受付へ急いだ。
─ ─ ─ ────
この会社の通用口はふたつ。作業員等が外回り時に使う事務所近くの裏口と、出勤時や客を出迎える用の正面玄関口。
裏口には階段で行けるけど、正面玄関口まではエレベーターと非常階段で移動する。
エレベーターの方が速いからそっちを使ったけど、満員で乗れなかったりで少々到着が遅れた。
足早に受付の方へ向かうと、客人らしきスーツ姿の男性が目に止まった。
背が高くて、肩幅広め。顔はまだ見えないけど、受付の子がにこやかに話しているのが遠くからでも見えた。
(イケメンぽいな……想像していたよりもかなり俺の好みっぽいかも)
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