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「んっ……?」
何かしらの物音が辺りからしていて、眠気が浅くなっていた。
昨日、紫崎が着せてくれた彼の服の袖で目元を擦りながら俺は目を開ける。
出勤用の服に着替えている紫崎の姿があって、俺はすぐ声を漏らしていた。
「俺の彼氏かっこいい……」
こちらに気付いた紫崎はびっくりしていたけど、照れた様に口許を緩めていた。
「今無理に言わなくていいですよ。おはようございます」
「おはよう。別に無理にじゃないから」
彼がいつも使っている布団に包まれ、家で過ごす彼を目に焼き付ける。
部屋は綺麗だし、着替え等をしていても部屋は荒れていない。わりときっちりとした性格なのか服の皺もなくて、清潔感も感じられた。
一通り出勤準備を進めたらしい紫崎は、鞄を持ちながら俺に視線を向けた。
「朝食、リビングに用意してますし、風呂も沸かしてますから、自由に過ごして下さい」
「えっ、出勤前にそこまで準備してくれたのか?」
「朝食は自分の用意するついでだし、風呂はボタンで済むから。あ、歯ブラシとかタオルも置いておいたから好きに使って下さい」
準備の良さに、俺は目を丸くした。
(すごい気が利くし、ちゃんとしてるな。付き合ってもあまり長続きしなかったって聞いてたけど、嘘みたいだ)
すると、紫崎は一度ベットの端に腰を下ろして、視線を俺に向けた。表情は真剣な風に見える。
「それから、鍵は合鍵置いてくんで……それ持っていっていいですから」
「っ! ……い、いいのか?」
嬉しいサプライズだけど、本当に大丈夫なのか。確認を取らずには居られなかった。
紫崎は恥ずかしそうに頷き、俺から目線を外した。
「皐月さんにはいつでも来て欲しいから、俺は構わない。今まで、合鍵預けたことなんてなかったけど……皐月さんにはこうしたかったから、持ってて」
「っぅ!」
「……!」
紫崎の気持ちが嬉しくて、俺は彼の頬に口付けてた。
「ありがとう、大事にする」
紫崎は頬を押さえてうつ向いていたけど、数秒後には俺の頬を撫でて愛しげにキスしてくれた。
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