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昼食終了後、俺は職場の雰囲気を悪くしていた。
ちらちらと視線を感じていたけれど、気にしていられる精神状態じゃない。
事務所に帰って来たはいいが、自分のデスクに突っ伏し、廃人みたいになっていた。
(なんであんなこと言っちゃったんだ俺……)
紫崎とだったら何度だってしたいし、身体に異常が生じたわけでもない。紫崎と別れるつもりも、毛頭なかった。
なので、あれからずっと後悔しているし、罪悪感にも苛まれている。
紫崎はと云うと、食堂からまだ戻ってきてはいない。
返事を聞くのも怖くて、パニクりながら自分勝手に紫崎から逃げてきてしまった。
でも、昼休憩はそろそろ終わるし、彼は戻ってくるだろう。
どう会えばいいんだと考えていたら、 事務所の扉が開いた。
「ほら、ちゃんと歩いて。事務所に着いたから」
聞き覚えのある声がしたから、顔を動かしてドアの方に目をやった。
(えっ!?)
目に飛び込んできた光景は信じられないもので、驚愕した。
水無瀬さんが紫崎の身体を支えて、事務所に入ってきた。
紫崎の表情は確認出来なかったけど、顔面蒼白。どう見ても手足に力は入っていなくて、支えてないと倒れてしまいそうだった。
水無瀬さんは呆れた様子で、困り果てているみたいだ。
事務の子や作業員達は、慌てた様子で二人に駆け寄っている。
「ど、どうしたんだ紫崎?」
「いや、食堂で相当ショックな出来事があったみたいで……立とうとした時床に崩れ落ちていたから、放っておけなくて連れてきたんだ。悪いがソファに座らせてやってくれないか?」
代わりに水無瀬さんが説明を始めていたが、苦笑いを浮かべながら俺を見ていた。
(まさか、水無瀬さんも食堂に居たなんて……気付かなかった)
俺はゆっくり視線を外し、顔をデスクに密着させてやり過ごすしかなかった。
紫崎は二人の作業員に抱えられ、事務所にあるソファに座らされていたみたいだけど。
「大丈夫か? 係長も様子変だし、食中毒とかじゃないよな?」
「は……?」
作業員の心配そうな発言に反応を示した紫崎の声。気力はなさげだったけど、彼の低い声が確かに聞こえた。
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