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俺にまた近付いて、先程、紫崎から受け取った日誌を俺に手渡し、彼は寂しげに笑った。
「ひねくれた俺がその方法を実践するのは、まだ先な気がするな……」
そう告げると、彼はドアの方に向かって行き、真っ正面を向いたまま挨拶で俺に手を挙げた。
「あまり遅くならない内に帰るんだぞ。またな」
「……お疲れ様でした」
俺と同じで、独りぼっちになった水無瀬さんの背中を見送って、俺は切り換えた。
日誌に目を通し、紫崎の筆跡を見付けて読み進める。
内容は完璧で、なにひとつ文句はない。
でも、一人になったら強い寂しさを実感してしまって。
少しだけ、日誌の文字を雫で滲ませてしまった。
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