ぶかとふたり

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 しかも。 「起きたんですね。おはようございます……」  隣には紫崎が居て、俺は彼の腕枕で寝ていた様子。  素早く飛び起きてベットから立ち上がり、後退りした。 「ちょっ、えっ、待って! 昨日泊めることにはなっただろうけど……これはどういう……」  頭を抱えてみたり、顎に手を当ててみたり。慌てながら考えるけど、何も浮かんでこない。  そして、一度よく確かめたのは、俺と紫崎の服装。 「……ちゃんと服着てる」  見ればわかるけど、自分の胸元に手を這わせて、布の感触をちゃんと認識した。  紫崎は身体を起こすと、当然の様に言った。 「昨日は部下として来たって言ったじゃないですか。何もしてないですよ」 「そ、そっか……」  安心するとこなのに、なんだか残念な気持ちも浮かんでくる。  そんな気持ちを見透かしたみたいに、紫崎は立ち上がって俺の側に寄り、頬を撫でた。 「何かあった方が嬉しかったですか?」 「えっ、あ、それはっ……」  あたふたして答えに迷っていたら、紫崎はふっと笑った。  嬉しそうな笑みにドキッとしていたら、紫崎は俺を引き寄せ、抱き締めた。  久しぶりの感覚に、胸がときめいた。  でも、こんなことされる資格、俺にはない。 「紫崎っ、放してくれっ」  身じろぐけど、彼は力を緩めようとは一切しなかった。それどころか、更に身体を密着させて、俺の身体のラインを大事そうに撫でた。  消そうとしても消えなかった気持ちが、溢れそうになる。 「すみません」 「え……」 「少しだけ……今だけ許して下さい」  紫崎の声が真剣なのは、すぐにわかった。強く拒否する気にもなれず、一旦は従うことに。  すると、彼は昨夜のことについて言及した。 「昨日、皐月さんが何を考えているのか、だいたいはわかりました。だから、今はこうしたいんです」 (昨日の俺は紫崎に何言ったんだ……)  酔って理性を失くした淫らな自分が一瞬頭を過って、嫌な汗を掻いた。  けど、少し身体を離した紫崎の表情は真面目なもので、そんな想像は俺からすぐに消えた。 「……今日は、俺に付き合ってもらえませんか?」  俺とがっちり視線を合わせた紫崎。その声はとても切実で、断ろうとは思わなかった。
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