きもちがしりたくて

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 酔っ払って訳がわからなくなっていても、それを聞ければ自分の指針にもなる。  卑怯な手だけど、今の俺にはこうするしかなかった。 「皐月さん」  俺が呼び掛けると、彼は俺の方をゆっくり向いて、ふにゃふにゃな笑顔を見せた。 「んぅー?」 「…………」 (やべぇ……可愛い)  目を覆って、一度天井の方を見上げた。 (俺も酒飲んでるから……理性緩くなってるし……落ち着かないと襲う)  肩を上下させながらゆっくり深呼吸して、改めて目の前の相手を見つめる。  あどけない表情の皐月さんに、どう質問しようか迷ったけど。  なんの捻りも無く、ストレートに聞いていた。 「皐月さんは……俺に抱かれたいですか?」  酔っ払いながらもはぐらかされるかもとか、考えていたけど。皐月さんは、恥じらいながらこう言った。 「うん、紫崎とエッチしたい……」  抱かれたくないと言われてからのこの発言は、破壊力が半端なかった。しかも、俺に抱き着いて擦り寄ってきてくれたから、愛しさが何倍にも増す。  けれど、ここで理性を手放して自分勝手に激しく皐月さんを抱くことは絶対に出来ない。  掻き抱きたくなる衝動を必死に抑えて、膝の上で強く握り拳を作った。 (皐月さんの覚悟を無駄にしたくない……)  そのまま皐月さんを見つめ、安心した微笑みを浮かべながら俺の気持ちを素直に口にする。 「ありがとう……それを聞けただけで嬉しい。皐月さんには嫌われたと思ってたから」  すると、皐月さんは俺の胸元に顔を埋めて、俺を強く抱き締めた。 「皐月さ……」 「紫崎のことは嫌いじゃない。本当に大好き。紫崎は何も悪くない……俺が悪い……悪いの俺だから……ごめんっ」  あどけなさがありながらも、自分を責め続ける彼の苦しそうな声と態度に、胸が痛んだ。  激しく抱くことは出来ないけど、心の痛みを軽くしてあげたくて、背中を擦った。 「大丈夫……大丈夫だから……俺、皐月さんから離れたりしないから。皐月さんのこと、ずっと好きだから……大丈夫」 「んっ……」 「絶対、大丈夫……」
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