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紫崎は情けなそうに眉を潜め、謝罪の意味を語ってくれた。
「昨日、皐月さんの本当の気持ちが知りたくて、わざとアルコール度数高い酒飲ませたんです……」
「えっ、そうだったのか!?」
「酔っていた方が、本音聞けると思って……すみません」
「いや、俺がちゃんとした理由言わなかったからそうしたんだろ? 紫崎は悪くないから」
俺がそう言うと、紫崎は強めに言葉を放った。
「皐月さんも悪くないだろっ!」
「っ!」
「それ、昨日酔った時も言ってましたけど……皐月さんだって何も悪くないですからっ」
その言葉は、俺が纏う悪い空気みたいなものを吹き飛ばしてくれた。
でも、紫崎の表情は暗くなってしまう。
「すみません、俺が盾になるって言ったのに……俺の行いのせいで智彩が危ない方向に動いたから、それが皐月さんを傷付ける形になった。こうなったのは全部俺のせいです」
「違うっ、紫崎は本当に悪くないからっ」
何度も首を横に振って否定する。けど、これだけじゃ紫崎は納得しないだろう。
「俺っ……」
本当のことを言うのはとても怖い。
でも、大事な人の気持ちを救いたくて、俺は嘘を棄てた。
「俺、いつか、紫崎と別れると思ってた。紫崎の大事な人達から紫崎を奪って、周りから反対されて、きっといつか引き離されるんだって。付き合うと、そういうのがすぐ想像出来る」
喋っていると、今までの苦しみがぶり返してきた。
「だから、別れることに慣れて、自分を強くしようとした。紫崎に抱かれたくないなんて、嘘だ。ほんとは、すごく抱かれたい。でも……俺弱いから……きっとまた嫌なこと考える」
俺の話を聞いた紫崎は、強い眼差しで俺を見て、いつもみたいに強く手を握ってくれた。
「じゃあ、皐月さんの気持ちが強くなって、また俺と付き合いたくなったら……言って下さい。それまでに俺も、皐月さんに見合う男になれる様に努力して……」
俺の左手を両手で包み込んで、薬指を自分の指で撫でながら。
「貴方が大丈夫になるまでいつまでも待ってますけど……その後は、一生貴方を放しませんから……覚えておいて下さい」
嘘のない、とても綺麗な瞳で、彼はそう言ってくれた。
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