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あの発言通り、有言実行したらしい紫崎は、態度が軟化して取っ付きやすくなっていた。
周囲にもすごく優しくなっていて、人気は急上昇。紫崎本来の魅力が周囲にもよく伝わる様になっていた。
自分の我が儘でこういう関係に収まっているのに、心配事が増えたのは想定外。
今は友達みたいな関係性が定着しつつあるから、発言がなかったことになるかも。そう考えることも少なくない。
(俺、紫崎のことはまだ大好きだけど……紫崎は俺に対してどう思ってるんだろ。今の関係のままを望むこともあるかもしれないよな……)
いつか別れるかもって、不安な気持ちはもうない。けど、もう一度付き合うのは本当にありなのか。そろそろ戻りたいって言うのは自分勝手過ぎないか。
そんな気持ちが表情に出ていたのかもしれない。
「取られるよ?」
「ひっ!?」
小声で、後ろから低く囁かれて、耳を抑えながら慌てて振り返る。
「耳元で喋んないで下さいよっ!」
クスクスと可笑しそうに笑う水無瀬さんを睨み付けたけど、彼の発言には切れ味があった。
「いやー、ついからかいたくなって。でも、気が気じゃないんだろ? 友人に恋人出来ると付き合いなくなるしなぁ」
小さめな声だし、周囲には聞こえていないだろうから、じゃれている様に見えるだろう。
でも、俺にとっては危機感を煽られている感じがして、血の気は引いていった。
「えっ、いや……そんなことは……」
「ないって言えるか? かなり時間経ってるしなぁ……」
「うっ……」
揺さぶられると、とても不安になってきた。
紫崎と今の関係になってからは、恋愛関連の話はほぼしてない。それは性的なことも含めてで、とても清い関係性を彼とは築いてきた。
以前、彼は消化不良的な欲求不満で様子がおかしくなったこともある。そういうデリケートなことはさすがに聞けてないけど、現状どうなのか。
俺の中で、長い間抑えてきた欲求等が暴走してきた。
(別の人を好きになってる可能性もないわけじゃないとなると……夜はもしかしたらフィーバーしてるとか……いや、紫崎に限ってそんなことは……)
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