いまといつか

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 夢見ていた紫崎との復縁が叶って、俺は舞い上がっていた。  アルコールが入っていたのもあるけど、本当に嬉しくて。  紫崎も同じ様に思ってくれている感じだったから、居酒屋から出た後はきっとホテルに直行。  そんな風に思っていたけど、実際に一緒に向かったのは、彼の住むマンションだった。  別れた後も何度か来ていたけど、今日は雰囲気が違う。仲の良い後輩の部屋じゃなくて、恋人の部屋だから。 「っ……紫崎っ……んぅっ」  玄関の扉を閉めてから、彼はすぐにキスを落としてくれた。久しぶりの感触に、腰が砕けそうだ。  俺の腰を支えながら唇を放した紫崎は、自分を落ち着ける様に深く息を吐いた。 「すみません、ホテルで乱暴に抱きたくなかったから帰ってきたのに……結局こうなって」 「紫崎がこうしたいって思ってくれたのが嬉しいよ。ずっと待たせてたからな、我慢してたんだろ?」 「それは、かなり……」  自分に呆れているみたいに笑った紫崎。俺も我慢していたから、同意して一緒に笑う。  靴を脱ぐと、彼は俺の手を引いて寝室に導いた。  真っ暗な中、改めて俺の身体 をきつく抱いてくれて、その感覚に俺も酔いしれた。 「自分で決めたことだけど、ずっと皐月さんに触れたかった……」  吐息混じりの声が切実さを感じさせてくれた。  背中に手を回して、愛しげに擦り寄る。 「けど、課長が皐月さんに近付く度に不安になって……もう俺に気持ちないかもって考えたりもした。でも触れられないから側に居ることしか出来なくて……今まですごくもどかしかった」 「それは、俺も。紫崎が俺のこと好きじゃないかもって考えて……今日は水無瀬さんに『取られるよ』って言われたから余計……」  紫崎から舌打ちが聞こえてきた。 (しまった……言わなきゃよかった……)  苛立ちが感じ取れたけど、力が強くなって、俺に対する気持ちも見えた。 「俺は誰にも取られないし……好きじゃなくなることもないから。本当は、最初の始まり方が特殊だった分、やり直す時はゆっくり進めようって決めてたんだけど……実際に皐月さんと戻ったら無理だった」 「いや、最初は紫崎が悪いんじゃなくて、俺の性癖のせいだからな。でも……」
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