いっときのふれあい

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 俺は、二人分の缶コーヒーと軽食を買って、紫崎と共に店を出た。  ─ ─ ─ ────  ホテルの客室。俺はベットに腰掛けて、紫崎をスーツ姿で待っていた。  部屋に備え付けられたシャワー室から、水が降り注いでる音が聴こえてくる。  滝みたいに心を静めてくれそうな音ではある。けれど、浴びている人物を想像すれば、俺の欲望を掻き立てる材料にしかならなかった。 「……」  俺は、悶々とした気持ちを抑える為に、無心で缶コーヒーを口にしていた。  飲み終えたら、空き缶はサイドテーブルへ。  姿勢は、膝に肘を置いて猫背気味。組んだ手を額に当てて、考え事をする格好。  紫崎が帰ってきたら何事かと思うかもしれないが、俺の心中穏やかではなくて。 (昨日は一部分しか見なかったけど、今全裸なんだよな。社員旅行の大浴場とかではさすがに自重して見たりしなかったけど……これからひっそり生きていく為の(かて)にしたいから、出来れば風呂上がりの肌色は範囲が広い方だと嬉しい。もうそれ見たらノンケの前では真面目に生きていくからっ。最後に思い出をくれっ)  もうこの先無いであろう展開に淡い期待を膨らませていたら、シャワーの音が止んだ。  最初からシャワー室に目線を合わせるのもどうかと思って、視界は床へ固定。  扉が開く音がして、紫崎がこちらへ近付いて来るのがわかった。  声が聞こえてから顔を上げる事にして、少し身構える。 「待たせてすみません。汗臭かったから、浴びた後の方が良いと思って」 「いや、気にしないで大丈夫だ……ぞ……」  顔を上げたらあまりにも衝撃が強くて、表情筋が機能しなくなった。  紫崎の今の姿は裸で、布は腰に巻かれたタオルだけ。普段見る事が出来なかった胸板や腹筋を見る事が出来て感無量で。 「ありがとう……」 「は? 何がですか?」 「あ、いやっ」  嬉しさのあまり、感謝の念が漏れてしまった。  首を振って誤魔化したけど、紫崎からは怪しんでいるみたいな視線が降ってくる。
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