いっときのふれあい

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 俺の顔を少し不安げに眺める紫崎。だから、俺も彼のモノに触れて教えてやる。 「気持ち良いからっ……んぅ、紫崎もっ」 「っ……!」  同じ様に一緒に扱いて、一緒に感じ合う。これが一番、俺達のやり方としては合っている気がした。 「んっ、っぅ!」  時折、紫崎は苦しそうな声を出していた。  彼が快感に耐えてる姿が可愛くて、顔がニヤけそうになるのを抑えながら手を動かすけど。 「ぁっ、紫崎っ」  先端を、親指でグリグリ刺激したり。かと思えば、根本から搾る様に擦ったり。  テクニックを身に付けてきた紫崎が負けじとそれを披露するから、限界も迫ってくる。 「あ、ぁっ、んんっ、もぅイく 、イくぅっ」 「ぁ、っ!」  二人でお互いのモノを激しく刺激し合い、とことん追い込んで。 「んぅーっ!」  身体を仰け反らせて達し、溜まっていたモノは外へ放たれた。少し遅れてから紫崎も身震いし、同じ様に絶頂を迎えていた。  乱れた呼吸を整えていたら自然と顔を合わせる形になり、紫崎は照れた様子で。 「……今更だけど、すみません……こんな事して……」  性欲が落ち着いた事で、我に返ったらしい。俺の上から退くと居たたまれなさそうに座って、ベットの端を見つめていた。  普段見られない姿を目にして、ふと笑みが溢れる。  横になっていた俺は汚れていない方の手を伸ばし、紫崎の頭に着地させた。 「大丈夫だ、相手するって俺が言ったんだから。紫崎にとって良い経験になったなら、俺には何の文句も無いよ」  ニコリと微笑んでやったら、俺は彼に背中を向けて、ベットから降りようとした。  彼に出来事を整理する一人の時間を与える為と、欲望にまみれた自分の顔を隠す為。変態チックなニヤニヤ顔は絶対見せられない。 (これは永遠に俺の記憶にも残るっ。さすがに抱かれはしなかったけど、最高の経験だっ)  これで、ノンケへの憧れを捨てて、同じ道を生きる者へ潔く身体を捧げられる。  正体を知られてしまったから、少しだけ紫崎とは距離が出来てしまうだろう。が、今更仕方がない。最初から、相容れないと決まっていたんだから、割り切って前に進むしかない。  そう自分に言い聞かせて、納得していた。
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