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「じゃあ俺もシャワー浴びて帰……っ!」
機嫌良く立ち上がったら、背中に素肌の感触があった。
がっちりと、逞しい腕で身動き取れなくされていて、後ろで紫崎が囁いた。
「また、頼めませんか……」
(また……?)
突然の事で頭がフリーズして。
「……えっと、それ、どういう……?」
動揺しながら軽く振り返ったら、紫崎は赤みのある顔で、ぶっきらぼうに言った。
「EDじゃないってわからせられたし、係長と、皐月さんとならこういう事しても大丈夫って思えたから……なんとなく」
一度きりだと思っていたから予想外で。だから、口を衝いて出たのがこの言葉だった。
「こういう事する俺は、嫌じゃないのか?」
紫崎はきょとんとしていたが、俺の肩に顔を埋めて、恥ずかしそうに言った。
「ED呼ばわりされたのは腹立ったけど……最初は俺の為に身体張ってくれたんだろ。それなのに、嫌だなんて思ったら……さすがに俺最悪だろ。それに、あんただから良いんだし。嫌だったらまたなんて言わないし……だから………」
「っー!」
「……何?」
顔面を両手で覆って地団駄を踏み、熱くなっていく顔を隠した。不審がっている紫崎の声には「なんでもない」と答えるしか出来ない。
ノンケとの関わりで、初めて本当の自分を認めてもらえたみたいな感覚がした。
(何か、少し嬉しいけど……変な方向に話いってる。またこういう事出来るのは、やぶさかではないけど、本当に良いのか?)
複雑な気持ちを抱きながら、俺はしばらく自分の欲望と戦っていた。
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