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苦笑していたけど、ふと紫崎の言葉に気付いて「ん?」と疑問を持つ。
「そういえばさっき、俺来るの待ってたって言った? 何で……」
紫崎は休みだし、昨日の今日で会いに来るとは思ってもなかったけど、彼はそわそわして。
「……一緒に、飯でも食べようかと思って」
「えっ」
「あの後だからちょっと考えたけど、話し掛けずらくなるのも嫌だし……飯くらいなら良いかと思ったんだけど……だめ?」
ジャケットのポケットに手を突っ込んでうつ向きがちの紫崎は、耳が真っ赤だった。
胸の辺りがぎゅっとするわ、腹の奥にでかいの欲しくなるわで。身体が反応し過ぎて、俺まで顔が赤くなる。
(紫崎の元カノには申し訳ないけどっ、部下が可愛過ぎてツライッ!)
もう何をされても構わないくらいだったけど、目的を思い出して平常心を取り戻した。上司っぽい、スマートな表情と態度を意識する。
「じゃあせっかく待っててくれたんだし、飯行くか。何食べる?」
「あそこの定食屋。メニュー多いし」
了承したら、大袈裟に感情は出さないけど、即座に店を答えてくれた。しかも、俺が前に好きだって言った、事前に食券を買うタイプのチェーン店。
俺に寄り添ってくれようとしてるのがかなり嬉しくて、浮かれそうになる。けど、次紫崎と二人っきりになったら、やろうと思っていた事を、もう実行しなければならない。
それが、俺の手を震わせた。
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